FFU合成まくらぎで環境負荷低減をご提案︕
〜京を⾒守る⼆⼤霊⼭への参詣鉄道でご採⽤〜

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紅葉のトンネルと展望列⾞「きらら」

FFU合成まくらぎ 現場レポート#04

積⽔化学が1980年にFFU合成まくらぎを開発し、おかげさまで45年が経ちました。
近年は国庫補助⾦を活⽤しながら、ご採⽤いただく鉄道会社様が増えております。
⻑寿命化や保線業務の省⼒化に⽋かせない合成まくらぎについて、叡⼭電鉄様にお話を伺いました。

Introduction

「えいでん」の名称でながく親しまれている「叡⼭電鉄」は京都市左京区の出町柳駅から、⽇本三⼤霊場にも数えられる「⽐叡⼭」へ繋がる叡⼭本線(路線距離5.6km)と、⽜若丸(後の源義経)の修⾏の地であり、「鞍⾺天狗」で知られている鞍⾺⼭や貴船神社へのアクセスである鞍⾺線(路線距離8.8km)の2路線を運⾏されています。また叡⼭電鉄の沿線には多数の⼤学や専⾨学校が⽴地しており、洛北の⽣活路線として地元の⽅に愛されています。
付近には歴史ある神社仏閣など、数多くの⾒どころがありますが、必ずというくらい話題に上るのが鞍⾺線の市原駅〜⼆ノ瀬駅の間にある「もみじのトンネル」。約250mの区間に、およそ280本のイロハモミジやオオモミジが⽴ち並び、初夏には「⻘もみじ」、秋には「紅葉」が⾞窓いっぱいに広がる光景を、⼤きなガラス窓が特徴の展望列⾞「きらら」の⾞内から⼀⽬⾒ようと国内外より多くの観光客が訪れます。
2025年9⽉に開業100周年を迎えられる叡⼭電鉄株式会社様では次の100年を⾒据えて様々な取り組みを⾏われております。今回は⽣産⼯程で出る切削粉を再利⽤した再資源化合成まくらぎをご採⽤いただき、ご担当者様へインタビューを⾏いました。

インタビュー : 2025年7⽉22⽇

Guest

叡⼭電鉄株式会社
鉄道部 技術課(⼯務担当) 助役 
杉浦 創 様
鉄道部 技術課(管理担当) 助役 
⼭川 誠 様

Interview

登⼭鉄道で活躍するFFU合成まくらぎ

———まずは、叡山電鉄様についてお教えください

杉浦様 : 叡⼭電鉄は1925(⼤正14)年に出町柳〜⼋瀬⽐叡⼭⼝間で開業しました。こちらを「叡⼭本線」とし、3年後の1928年(昭和3年)に「鞍⾺線」となる宝ヶ池〜市原駅まで開業しました。鞍⾺駅までの全線開通は、更に1年後の1929(昭和4)年の12⽉20⽇となります。
いずれも⽇本屈指の急勾配路線で、特に鞍⾺線の⼆軒茶屋駅以北にある50‰の連続勾配は登⼭鉄道でも珍しい存在です。でもトンネルは鞍⾺線の1箇所にしか無いんですよ。

⼭川様 : 創業時は、京都電燈株式会社という電⼒会社の電鉄部⾨が運営する路線でした。その後、1941(昭和16)年の配電統制令により、京都電燈は解散し、電鉄部⾨は京福電気鉄道株式会社として独⽴し、同年に鞍⾺電気鉄道株式会社が合併いたしました。上記の様に幾度かの組織変更がありましたが路線としては今年(2025年)でちょうど100周年ですね。

(左)鉄道部技術課(⼯務担当)助役 杉浦創様 (右) 鉄道部 技術課(管理担当)助役 ⼭川誠様
(左) 鉄道部 技術課(⼯務担当) 助役 杉浦 創 様
(右) 鉄道部 技術課(管理担当) 助役 ⼭川 誠 様
———近年は海外の方も多く訪れておられますね。本日伺う途中にもたくさんいらっしゃいました

⼭川様 : ⽇本⼈の⽅が少ないのでは。とも思うJR京都駅と⽐べたらまだまだですが、当路線にもコロナ前と⽐べても遜⾊がないくらいのお客様にいらしていただいています。ニュースでは「オーバーツーリズム」が問題と喚起されていますが、当社としましては、まだまだ多くのお客様に訪れていただき「乗って楽しむ」ことを体験してもらいたいですね。より多くのお客様に沿線を楽しんでいただけるように、普通運賃のみでご乗⾞いただける、観光列⾞「ひえい」や、展望列⾞「きらら」も運⾏しております。WEBサイトで時刻表も公開しておりますので、是⾮お時間を合わせてお越しいただければと思います。

新緑の季節にも多くのお客様がご乗⾞
新緑の季節にも多くのお客様がご乗⾞

杉浦様 : ただ、秋の紅葉シーズンである11⽉は、京都全体がどうしても混雑してしまいます。私のオススメは1⽉〜2⽉の冬のシーズンですね。外は寒いですが、雪の⽇に温かい⾞内から⾒る「雪景⾊を纏った、もみじのトンネル」は⼀⾒の価値ありですよ︕

雪景⾊と展望列⾞「きらら」
雪景⾊と展望列⾞「きらら」
———ありがとうございます。続いて杉浦様と山川様のお仕事内容について、伺わせてください

杉浦様 : 私は技術課で⼯務を担当しております。主に現場での⼟⽊⼯事と保線がメインです。少ないですが建築も含まれており、これらを集約した仕事となります。

杉浦様
杉浦様

⼭川様 : 私は技術課の管理担当をしており、普段は事務所で業務にあたっております。役所や⾃治体様との窓⼝や、他にも庶務関係や教育関係、安全衛⽣に関する業務を全般的に担当しております。

⼭川様
⼭川様
———自治体様との連携とは、どういった内容でしょうか?

⼭川様 : 補助⾦の申請であったり、調査の対応であったり。⼿続き等も含めて担当しています。
⼀例としまして、地域の公共交通の確保・維持、利便性の向上等の取組みに対して、国⼟交通省様より「地域公共交通確保維持改善事業費補助⾦」を交付いただいております。年度ごとにきちんと計画を⽴てて申請書類を作成する必要がありますが、こちらの補助⾦で、レールや枕⽊の更新を⾏っておりますので⾮常にありがたいですね。

杉浦様 : ⽊枕⽊から合成まくらぎに交換する際も、国から1/3、京都府より1/6、京都市より1/6の補助をいただいていますね。当社の様に予算が厳しい地⽅鉄道でも、安全というのは何よりも優先されますので、この補助⾦を活⽤させていただいております。

⼭川様 : 2020年7⽉の豪⾬被害では、貴船⼝駅近くの⼭の斜⾯が崩れて、線路上に倒⽊や⼟砂が流れ込み、鞍⾺線の市原〜鞍⾺駅が運休となり、復旧までに1年2ヶ⽉を要しました。幸いに⼈的被害や⾞両への被害はありませんでしたが、崩壊した急斜⾯の地質調査について治⼭事業を実施する京都府様や近畿運輸局様と連携して対応にあたりました。
この際は災害の復旧として国、府にその費⽤を負担いただきました。

線路に覆いかぶさった⼟砂・倒⽊
線路に覆いかぶさった⼟砂・倒⽊
(2020年7⽉8⽇撮影)
———叡山電車での枕木使用状況についてお聞かせください

杉浦様 : 少し細かくなりますが・・・
PCまくらぎが全線で約2万8千本、RCまくらぎが約2千本、⽊枕⽊が約5千3百本、合成まくらぎが約2千本です。
うち5%ほど残っているRCまくらぎと、15%ほど残っている⽊枕⽊がだいぶ古くなっているのです。RCまくらぎは50年を超えているものもあります。急曲線部などは、ほぼ交換が完了しているのですが、他の箇所もいきなり全部交換するのは⼈員的にも予算的にも難しいので、保線作業で調査された優先順位を元に、計画的に交換しています。

⼭川様 : 最近では⽊枕⽊も価格が⾼騰していますしね。メーカー側から寿命は約20年から持って30年と⾔われておりますので、それまでに交換する計画を⽴てる必要があります。

———FFU合成まくらぎはどのような箇所に採用されているのでしょうか
FFU合成まくらぎが採⽤された鞍⾺川橋梁
FFU合成まくらぎが採⽤された
鞍⾺川橋梁

杉浦様 : 橋梁部ですね。当社には本線と鞍⾺線を合わせて⼤⼩40の橋梁がありますが、⼤きな橋にはもう必ずと⾔っていいくらいFFU合成まくらぎを採⽤させてもらってます。橋梁部の枕⽊は、1本ずつ形状が異なる場合がありますが、その際も積⽔さんに図⾯をお渡しして、その形状にすっぽりと収まる様に機械で加⼯して収めていただいております。合成⽊材ですから、現場での調整も可能なのですが、その必要もほとんど無いですね。

⼭川様 : でも実は橋梁に1箇所だけ、新しい⽊枕⽊の部分があるのです。3年程前に⽊枕⽊に問題があり、もう持たない。という事態が発⽣し、計画を⽴てる余裕がなくて、応急的に⽊枕⽊で更新しましたが、20年後くらいには、ここもFFU合成まくらぎになると思います。そうすれば当社の主だった橋梁部は全て合成化できます。

———FFU合成まくらぎはどのような経緯で採用されたのでしょうか

杉浦様 : 当社の記録では、1995(平成7)年ですね。出町柳駅北側の分岐器に採⽤させていただきました。この頃は関⻄地区では⼤⼿さんを含めて、まだまだ合成まくらぎの採⽤事例は少なかったですね。地⽅鉄道での採⽤としては当社はかなり早かったと思います。導⼊から30年近く経過していますが、現在も全く問題は⽣じていませんよ。
今回は、積⽔化学さんの新たな取り組みである再資源化合成まくらぎを採⽤させていただきました。

———次は保線業務について伺わせてください

杉浦様 :レールや枕⽊の交換作業については、最終電⾞から始発電⾞までの夜間に⾏います。でも昼間にできる作業は、⽇中に⾏います。例えば「道床のつき固め作業」ですね。電⾞が繰り返し通過することで、枕⽊の下にある砕⽯がすり減って割れたり、砕⽯の間隔が緩んで広がったりするのです。これを放置しておくと、徐々に隙間が⽣じて、レールと枕⽊が宙に浮いている状態になってしまうので、⽇々の補修が重要なのです。ホームがある場所では⽇中は⾏わないですが、⼀般区間では実施していますよ。あとは草刈り作業も⽇中に⾏います。⾃然豊かな区間を⾛る路線ですので、すぐに草⽊が伸びてきてしまうのです。

渡辺様 : やはり夜間作業ですと、ライトを持ってきて、夜間⼿当も⽀給して。となり⽇中の作業よりも費⽤が⾮常に嵩むことは悩みの種ですね。
ただ、最近では特に夏の⽇中も気を使います。熱中症の対策が不可⽋になっていますので。加えて作業員の⽅も⾼齢化されていますので、今後に向けて如何に省⼒化していくかが課題となっています。そういう意味でも⻑寿命化が⾒込めるFFUは、鉄道業界にうってつけの材料ですね。

———合成まくらぎの更新工事はどのように行われるのでしょうか

杉浦様 : ⼭岳鉄道の橋梁部が主な場所ですから、横に道路があるわけでもなく、線路上を運んでいかなければなりません。特に勾配がキツイのが鞍⾺線の市原〜鞍⾺駅間で、4.7kmの営業キロの間に86.3mも標⾼が上がるのです。この区間に材料や道具を運ぶのも⼀苦労です。それらは貨⾞で運ぶのですが、急勾配の途中で狙った位置にピタリと⽌めるのが難しい。熟練の運転⼠ならば、25メートルずつ動かして⽌める。ということもお⼿の物なのですが、若⼿の運転⼠となると、そうもいかないこともあり苦労が絶えないですね。保線作業は勾配が無い⽅が絶対良いです︕

⼭川様 : この様な過酷な環境ですから、枕⽊の交換頻度はできるだけ少ない⽅が良いです。もちろん、合成まくらぎを選んだら未来永劫、交換しなくて済むという訳ではないことは承知していますが、できるだけ次に来る交換までの期間を⻑くしたい。そういう点で従来の⽊枕⽊だったら20年〜30年スパンでの交換となりますが、FFU合成まくらぎだと50年〜70年スパンでの交換となると、選択するのは⾃明の理ですね。もちろん、状況により合成から合成に交換することも出てくるかと思いますが、その際も是⾮、積⽔さんに相談をさせていただければと思います。

⼭間部の勾配区間にある橋梁
———最後にFFU合成まくらぎに関するご要望や積水化学へ期待することをお聞かせください

杉浦様 ⼭川様 : 今回積⽔化学さんの⼯場に伺った際に、最新の製造設備を⾒学しました。また、⽣産⼯程で出る切削粉を再利⽤した再資源化合成まくらぎなど、CO2削減や環境貢献に対する活動もお伺いできました。
インドなど海外にも⼒を⼊れられているとのことで、その勢いでぜひ⽇本のみならず世界にシェアを広げていってください。もう我々鉄道会社も、積⽔化学さんのFFU合成まくらぎ無しでは運⾏が成り⽴たない。と⾔っても過⾔ではありません。

積水担当 : 今回、国内⺠鉄様で初めて再資源化合成まくらぎをご採⽤頂きました。今後も双⽅で環境負荷低減の取組みを進めて⾏ければと考えております。
引き続きご期待に応えられる製品づくりに励んでまいります。

———本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。今後も継続して、ご期待に応えられる製品づくりに励んでまいります

—— 「えいでん」に乗ろう︕ ——

本線 ⼋瀬⽐叡⼭⼝駅
本線 ⼋瀬⽐叡⼭⼝駅
鞍⾺線 鞍⾺駅
鞍⾺線 鞍⾺駅

「⽐叡」と「鞍⾺」そして「紅葉」と続けば、関⻄の⽅ならばきっと「えいでん」さんを思い浮かべる程、有名な路線ですよね。貴船神社(⼟地名は”きぶね”と濁りますが、神社は”きふね”と濁らないのですよ)に⾏くもよし。鞍⾺⼭に天狗さんを⾒つけに⾏くもよし。⼋瀬⽐叡⼭⼝から⽐叡⼭をロープウェイで経由して坂本、びわ湖に⾄る観光ルート「⽐叡⼭・びわ湖<⼭と⽔と光の廻廊>」も⼈気を集めているとのことです。
でも隠れた”推し”としてはラーメン街道︕出町柳駅から3つめの⼀乗寺(いちじょうじ)駅の周辺は京都のラーメン激戦区と称されるくらい多くのラーメン屋さんが⽴ち並んでいるんです。あっさり系やこってり系、豚⾻醤油や鶏⽩湯など様々な味を楽しめるように、えいでんさんでは「らーめん切符」も発売されているとか(詳しくはWEBサイトをご覧ください)。あと、新たなスポットとして、叡⼭電⾞開業100周年事業として、鞍⾺線の⼆軒茶屋〜市原駅間の線路沿い約450mにわたり、電⾞の⾞窓から「花桃」を楽しめる新たな癒しのスポット、「はなももかいどう」が誕⽣します。⾒頃は3⽉中旬から4⽉中旬を予定とのことで春が待ち遠しいですね。四季折々の⾃然を感じられる、「えいでん」さんに何度でも乗りにいきたくなりますね︕


Products

今回ご紹介させていただいた製品

ガラス長繊維強化プラスチック発泡体
エスロンネオランバーFFU

製品解説———

エスロンネオランバーFFUは、硬質ウレタン樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した合成木材です。天然木材に代わる素材としてあらゆる分野で使用可能。自然環境保護に役立つ素材として注目されています。

特長
  • 1.天然木材のように

  • 2.プラスチックだから

施工例
  • 1.水処理施設に

    覆蓋

    耐久性に優れ、水に浮く軽さを持ち、万一落下した場合も回収が容易です。長期使用品のリユースが可能でライフサイクルコスト削減にも貢献します。

  • 2.港湾施設に

    浮桟橋

    耐水性・耐食性に優れ防腐処理の必要が無く、水質に影響を及ぼさないため環境に配慮した設計が可能です。

  • 3.鉄道施設に

    合成まくらぎ

    コンクリートと同等の品質安定と耐久性能をあわせ持ちながら木材のように施工でき、鉄道会社各社に採用されています。

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