積水化学のクロスウェーブが特定都市河川の浸水対策に!
茂原市の福祉センター駐車場整備工事の貯留槽に採用

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茂原市 五郷福祉センター 駐車場下に設置中のクロスウェーブ

Introduction

人口約85,000人の茂原市は、千葉県のほぼ中央に位置します。九十九里平野の温暖な気候と天然資源に恵まれ、自然豊かな環境にありながら都心へのアクセスも良好な農業、商業、工業ともにバランスのとれた街なのですが、市内を流れる一宮川の浸水被害に悩まされていました。そこで浸水対策の一環として積水化学のプラスチック貯留材「クロスウェーブ」が採用されたと聞き、茂原市の「水害のない街づくりプロジェクト・チーム」の担当でもある都市建設部の渡邉様と古田様にお話を聞かせていただきました。

茂原市 都市建設部 土木建設課 流域治水対策室
技師 古田 潤弥 様 室長 渡邉 誠剛 様

インタビュー : 2025年8月25日

Guest

茂原市 都市建設部 土木建設課 流域治水対策室
技師 古田 潤弥 様 室長 渡邉 誠剛 様

Interview

地下貯留槽で内水氾濫対策!

———まずは茂原市様における浸水対策の取り組みについて教えてください

渡邉様 : 茂原市では平成以降、35年の間に5度の大きな浸水被害が発生しました。令和元年10月25日の豪雨では一宮川水系(11河川)の数カ所で氾濫が発生し、一宮川流域の茂原市と近隣の長柄町、長南町で家屋約4,000戸、官庁舎2棟、病院1棟などの主要施設に甚大な浸水被害が生じました。
この浸水被害を受けて令和2年1月、千葉県が行う河川整備と流域市町村の内水対策(排水施設整備、貯留)、土地利用施策(建築規制等)が連携して浸水被害ゼロを目指す「一宮川流域浸水対策特別緊急事業」(令和11年度末迄)がスタートしました。

茂原市 内水ハザードマップ

令和3年3月には千葉県と流域6市町村からなる「一宮川流域治水協議会」(気候変動による水害の激甚化・頻発化に備え、流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で水害を軽減させるための協議会)が設置されました。
このように千葉県と流域市町村をあげて水害対策に取り組んでいるところに、令和5年9月の台風13号接近に伴う大雨。令和元年の豪雨を上回る観測史上最大の降雨量(1時間あたりの最大雨量78ミリ、降り始めからの総雨量405ミリ)となり、河川氾濫や内水氾濫が発生し、住宅等が甚大な浸水被害を受けました。
その様な中、令和6年5月に初当選した、市原 淳市長は水害対策を主要な政策に掲げており、昨年(令和6年)12月に「水害のない街づくりプロジェクト・チーム」(7課22名)を立ち上げ、従来の部や課の枠組みを超えて浸水対策強化に取り組んでいます。

———市長は千葉県議会議員時代から水害対策に取り組まれ、「田んぼダム」の普及促進に努めておられると伺いました

渡邉様 : 「田んぼダム」は、田んぼの持つ貯水機能を利用し、大雨の時に雨水を一定時間田んぼに貯めてもらう仕組みです。貯めた雨水を時間をかけてゆっくりと排水することで、内水氾濫(雨で川の水位が上昇して堤内地に降った雨が自然に川へ排水できなくなり、堤内地の水路があふれ出したり、下水道のマンホールの蓋から下水が噴き出したりする現象)を軽減する効果がありますので、営農者の皆様のご理解ご協力を得て「田んぼダム」を増やしているところです。

———それでは、クロスウェーブについて伺います。今回はどのような経緯で設置されたのでしょうか?

渡邉様 : 令和5年10月1日、一宮川水系とその流域は特定都市河川浸水被害対策法に基づく特定都市河川及び特定都市河川流域に指定されました。
これは、全国各地で頻発している都市部の河川流域における浸水被害対策を進めるための制度です。一例として一宮川の場合、面積1,000m2以上の雨水浸透阻害行為(耕地を宅地に変更したり、土地を舗装したりするなど、浸透能力が低下し雨水流出量の増加が懸念される行為)については千葉県知事の許可が必要となり、対策として雨水貯留浸透施設の設置が義務付けられることになりました。
クロスウェーブを設置したのは、この雨水浸透阻害対策のためです。

古田様 : 五郷福祉センター(茂原市綱島)は地域の皆様の交流の場であり、福祉の向上や子育て支援を担う複合施設です。災害時の避難所ともなっているこの福祉センターの更なる利便性向上のため、隣接して約2,000m2の駐車場を設けることになったのです。ですが、その駐車場用地は、もともと田んぼであったところ。
そこをアスファルト舗装することになりますので、そのままでは雨水浸透能力が低下してしまいます。表面排水を集めて河川への流出を抑制する雨水貯留浸透施設を設置することになり、コンクリート貯留槽とプラスチック貯留槽の比較検討を重ねた結果、プラスチック貯留槽を採用しました。

———工事について詳しく教えてください

古田様 : 五郷福祉センターの駐車場整備工事は工期が令和7年3月11日から12月12日までとなっていて、現在(8月25日)も工事が続いています。工事面積は2,400m2。このうち駐車場となるのが2,031.6m2で、駐車台数は67台の計画です。
クロスウェーブHDを用いた雨水貯留槽設置の工程は既に完了していて、貯留槽の大きさは153.4m3、空隙率が95%のため貯留容量は145.73m3になります。
駐車場に2本のU字溝を設けて降った雨を2基の流入桝に導き、流出人孔からは自然流下で放流する仕組みになっています。

駐車場敷地に設置されたクロスウェーブ
———クロスウェーブを選定された理由を教えてください

渡邉様 : お話しした通り、水田であった土地を駐車場として利用するため雨水浸透機能の確保が必要となり、本工事の設計を委託した設計コンサルタントに雨水貯留槽の検討をしていただきました。
元々水田ということもあり地盤があまり強くないため、重量のあるコンクリート製の場合は地盤改良工事が必要になります。
それに比べてプラスチック製であれば軽量ですから地盤支持力の影響を受けにくい。地盤改良等の必要がなく、必要な貯留量を確保できるメリットがあり、今回の工事にはプラスチック貯留槽が適していると判断しました。

———施工状況をご覧になったご感想はいかがでしたか?

渡邉様 : 実際に施工現場を見て感じたのはやはり、施工性が良く設置スピードが驚くほど速いということです。今回は全部で820枚のクロスウェーブHDを積層して貯留槽を構築したのですが、手際よく図面通りに施工が進み、半日強で設置が完了しました。1枚につき約8kgと軽量ですから、手作業でどんどん設置が進んでいくのが印象的でしたね。施工にかかる時間が短いということはそれだけ人件費も削減できるということですから、大きなメリットだと思います。
設置工事を行った7月17日には設置状況見学会が実施され、市長をはじめ地元自治会の方など多くの関係者が視察に訪れました。実際に部材を持って、その軽さが実感できたのではないでしょうか。

手作業での施工風景
見学会に参加された市原 淳市長
———これからもクロスウェーブの特長が生かせるような場所があるでしょうか ?

渡邉様 : 一宮川が特定都市河川に指定されたことから茂原市でも雨水貯留浸透施設の設置工事が増えていくと思います。それぞれのケースにおいて、クロスウェーブのような地下貯留施設を選択したり、あるいは地上の調整池としたりすることになりますが、現場条件に合えばもちろん検討したいです。
今回が初めての設置ですから、今後の状況を踏まえて検証していきたいと考えています。ちなみに、クロスウェーブのメンテナンスのポイントを教えてください。

点検口から内部の清掃が可能

積水化学 : クロスウェーブは流入桝に泥だめが設けられていて、土砂を分離して雨水を貯水槽内部に流入させる構造になっており、土砂の堆積による性能低下を防いでいます。ただそれでも内部に土砂が入り込むことはありますので、点検口から作業員が貯水槽内部に入って容易に清掃することもできる設計となっています。

渡邉様 : わかりました。地下の施設ですから長期的な維持管理には不安を感じていたのですが、メンテナンスがしやすいように工夫されているのですね。

———最後に、製品へのご要望や積水化学に期待されることがありましたらお聞かせください

古田様 : 近年の気候変動に伴い、今後も茂原市だけでなく全国で浸水被害の対策が重要になってくる中で、クロスウェーブのような雨水貯留製品に対するアンテナをもっと高く立てる必要があると考えています。
そのためにはメーカーの皆さんから積極的に情報の発信をしていただけると、知識や関心がより高められると思いますので、よろしくお願いします。

積水化学 : 製品情報やご採用事例など、ご検討のお役に立てる情報を発信していくように努めてまいります。
なお、千葉県市原市にあります当社の千葉ソリューションセンターでは、製品の実証実験設備などの見学会を実施しており、クロスウェーブも展示しております。よろしければぜひご参加ください。

古田様 : 実際に製品を見ることができるのは貴重な機会だと思います。機会があればよろしくお願いします。

———本日はお忙しいところありがとうございました。

<営業担当から一言>

管材土木営業部
クロスウェーブグループ
谷澤 利幸

この度は浸透阻害対策としてクロスウェーブのご検討ならびに取材へのご協力、誠にありがとうございました。クロスウェーブは、製品高さが低く設計高さを調整しやすい特長があります。また軽量で輸送効率が良く再生ポリプロピレン使用によりCO2排出量削減効果の高い製品です。しっかりと品質管理を行った製品の供給を通じて、治水・浸水対策による国土強靱化、および茂原市様でもご表明のカーボンニュートラルの取り組みにも貢献してまいります。

Products

今回ご紹介させていただいた製品

プラスチック貯留材 クロスウェーブ

「クロスウェーブ」シリーズは、雨水流出抑制や雨水利用のため地下に雨水貯留槽や浸透槽を構築するプラスチック製ブロック材です。本体とスペーサーのわずか2部材で構成されており、側板や接合部材が不要で手作業で施工可能。
近年頻発するゲリラ豪⾬・集中豪⾬や、⼤型台⾵による⾬⽔を効率的、安全に地下貯留して流出量を抑制し、都市型⽔害(洪⽔や浸⽔)リスクを低減させ、安⼼・安全な治⽔対策に貢献します。

  • 設置条件や埋設環境などに広く対応可能
  • 養生期間が不要で工期を短縮
  • CO2排出量削減効果が高い『サステナビリティ貢献製品』
  • 国内の自社工場にて徹底的な品質管理のもとに製造
27年の実績で国内シェアが圧倒的!

特長

空隙率95%を実現し、
十分な量の水を貯留可能

T-25車両の通行に対応
(一般道路を除く)

接合部材が不要で、
積み上げは人力のみ

レベル2 地震動の耐震性 
東日本大震災でも倒壊事例なし

リサイクル材使用で
環境負荷が少ない

施工例

石川県内区画整理 調整池(貯水量:9,200m3

宮城県内庁舎 調整池(貯水量:1,700m3

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