鳥取県 若桜鉄道 国の登録有形文化財
『第一八東川橋梁』にFFU合成まくらぎが採用されました!

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若桜鉄道 若桜駅舎

FFU合成まくらぎ 現場レポート#05

積水化学が1980年にFFU合成まくらぎを開発し、おかげさまで45年が経ちました。
日本全国の鉄道路線でご採用をいただいている長寿命化や保線業務の省力化に欠かせない合成まくらぎについて、若桜鉄道様にお話を伺いました。

Introduction

鳥取県の八頭町から若桜町を結ぶ若桜鉄道若桜線。
その若桜線の歴史は古く、大正11(1922)年の改正鉄道敷設法にて「鳥取県郡家ヨリ若桜ヲ経テ兵庫県八鹿附近ニ至ル鉄道」として計画され、昭和5(1930)年1月に第1工区として郡家駅から隼駅の間が、同年12月には若桜駅まで開業されました。その後、八鹿まで延伸されることはなく現在の営業キロ19.2キロの路線となっておりますが、沿線には大きな魅力が沢山あります。
若桜駅構内に設けられた機関車の向きを変えるための転車台、若桜駅を含む多くの駅舎やプラットホーム、今回エスロンネオランバーFFUが採用された第一八東川(だいいちはっとうがわ)橋梁をはじめとする鉄橋など、関連施設23施設が、去る平成20(2008)年7月に国の登録有形文化財に登録されました。
また若桜駅では、昭和13(1938)年に製造され現役を退くまでに約150万キロ(約地球37周半)を走った、蒸気機関車(C12-167)の体験運転や、SL・トロッコへの乗車(事前申込が必要)もできます。
そんな魅力たっぷりの若桜線に架かる橋梁枕木の交換にFFU合成まくらぎを採用いただいたとのことで、若桜鉄道株式会社の渡辺様にお話を伺わせていただきました。

インタビュー : 2025年8月23日

Guest

若桜鉄道株式会社 取締役 鉄道部長
渡辺 雅己 様

Interview

文化財としての景観と歴史を守る

———まずは、若桜鉄道様についてお教えください

渡辺様 : 若桜鉄道若桜線は鳥取県東部にあるJR西日本、因美線の郡家(こおげ)駅から分岐し、若桜駅までの19.2キロを約30分で結ぶ路線です。駅数は8駅で、若桜駅のみが有人駅となっており、その他は無人駅です。平日の運行本数は13往復で、うち6往復がJR因美線で鳥取駅まで乗り入れています。
昭和62(1987)年の国鉄分割民営化後、同年の10月に若桜鉄道株式会社による運行を開始しました。
その後、平成21(2009)年に、全国初となる公有民営による上下分離方式へ移行しました。
また平成28(2016)年には、隼ラッピング列車の運行を開始し、平成30(2018)年には、水戸岡鋭治さんにデザインを依頼し、3両の観光列車を運行開始いたしました。

若桜鉄道株式会社 取締役 鉄道部長 渡辺雅己様
取締役 鉄道部長 渡辺 雅己 様
———こちらに伺う際に、ちょうど水戸岡鋭治さんがデザインされた車両に乗車しました

渡辺様 : 若桜鉄道では「昭和号」、「八頭号」、「若桜号」という3両の観光列車を運行しているのですが、いずれのデザインもJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」など、数多くの観光列車を手掛けられている、工業デザイナー水戸岡鋭治さんにお願いしました。「新しくて懐かしい鉄道の旅」というコンセプトが若桜鉄道にピッタリだと思っています。

木の温かみが感じられる「八頭号」の車内
木の温かみが感じられる「八頭号」の車内
———隼ラッピングとは、どの様な列車なのでしょうか

渡辺様 : 平成20(2008)年に二輪専門誌の企画で「8月8日は隼の日。隼オーナーは若桜鉄道の隼駅に集合!」と呼びかけられた所、県外から7台のスズキ社製のバイク「隼」が集結しました。その後、地域の活性化を図るべく「隼駅まつり」を毎年開催し、2025年開催時には2日間でのべ2,000名の方にご来場を戴きました。式典にはスズキ株式会社代表取締役社長 鈴木俊宏氏も出席されました。ライダーのみなさんもびっくりしておられましたね。

隼ラッピング列車とスズキ・GSX1300R 隼
隼ラッピング列車とスズキ・GSX1300R 隼

隼駅は昭和4(1929)年に建築され、今は国の登録有形文化財にも登録されています。「隼駅」の由来は、かつて鳥取県八頭郡にあった「隼村」より命名されておりますので、実はバイクの「隼」とは直接、関係はないのですが、今では全国からバイクのライダーや鉄道ファンに、"聖地"として広く知られるようになりました。私が見た限りですが北は室蘭。南は熊本ナンバーを拝見しました。このイベントに参加される為に、隼を買った。という方もいらっしゃったそうですよ。
これが縁で、スズキ株式会社様にご協力をいただき、平成28年より隼ラッピング列車を運行しております。

———駅が重要文化財に指定されているのですか

渡辺様 : 平成20(2008)年7月に若桜鉄道の終着駅に設けられた機関車転向のための転車台。それに若桜駅他、多くの駅舎やプラットホーム、第一八東川橋梁をはじめとする鉄橋など、関連施設23施設が国の登録有形文化財に登録されました。
途中の安部駅は、平成3(1991)年の映画「男はつらいよ 寅次郎の告白」ロケ地にもなりましたよ。

歴史的な鉄道景観を形成している安部駅のプラットホーム
歴史的な鉄道景観を形成している安部駅のプラットホーム
質感の比較

渡辺様 : この登録有形文化財への登録により、設備の外観を補修するときは、事前に補修内容の是非を確認することと、景観を損なわないように気をつけています。今回敷設した橋梁用のFFU合成まくらぎも従前からの景観を損なわないように、積水化学さんに頼んで色を従来の木枕木と同じ質感にするように変更していただきました。こういった要望にも対応をいただけるのは有り難いですね。
※特注色での対応になります。

———第一八東川橋梁での、枕木交換についてお聞かせください

渡辺様 : 第一八東川橋梁は八頭町久能寺の八東川に架かる若桜鉄道最長の鋼製8連桁橋で橋長は139mです。カーブ半径の長さが350m、カント量(レール左右の高低差)が57mmと、全体が緩やかに湾曲している橋となります。ここに使用されていました、130本の木枕木を、2022年から2023年の2年にわけて積水化学さんのFFU合成まくらぎに交換させていただきました。

八東川に架かる第一八東川橋梁
八東川に架かる第一八東川橋梁
———FFU合成まくらぎを採用された、きっかけは何だったのでしょう。

渡辺様 : この橋は若桜線開業前年の昭和4(1930)年に架けられた鉄道橋なのですが、橋側歩道(きょうそくほどう)がないのです。橋側歩道というのは、その字が表す通り、橋の横に鉄橋の維持管理や線路の保守点検用に取り付けられる通路のことです。
橋梁は、主に高い場所に架けるものですので、ここでの高所作業は危険も多く、枕木を取り替えるとなりますと、当社の場合、安全に作業を進める為に先ずは橋梁の側面に足場を作る。という工程が必要になります。

作業の準備の為にお金を掛けて、交換作業が完了したら撤去してしまうわけです。例えば橋梁の枕木1本が悪くなった。ということで、交換する為にまた足場を組んで・・・となりますと、正直、費用的に苦しいのです。
特に橋枕木については、できるだけ交換の回数を減らしたいというのが鉄道会社の願いだと思います。そこで長寿命化が期待できる、積水化学さんのFFU合成まくらぎを採用させていただきました。まだ2~3年くらいしか経過していませんが、現状で全く問題ないですよ。メンテナンスフリーとまではいきませんが、ほぼそれに近いイメージですね。

橋の左右に仮の足場が組まれた状態
橋の左右に仮の足場が組まれた状態

渡辺様 : 加えて、橋梁の枕木はその1本、1本に調整が必要ということですね。先ほど申しました通り、今回の橋梁はゆるやかにカーブしています。列車がカーブを曲がる時に、かかる遠心力で脱線しないようカーブの外側のレールを内側より高くする為に枕木の左右の厚さを変える必要があるのです。以前の木枕木ですと、枕木の大きさは同じですので、高さの調節にパッキン板を付ける必要がありました。
ただ木枕木とパッキン板は一体ものではないので、釘等で止めるのですがどうしても年月が経つと劣化して釘の支持力が効かなくなってくるのです。そうなるとこのパッキン板だけがスポンと抜け落ちてしまって、必要な高さが保持できなくなりレールが下がってきてしまいます。その点、FFU合成まくらぎは図面を積水さんにお渡しすればオーダーメイドで作って納めてもらえますので、パッキン板を後付けする必要がなく安心ですね。

———今後もFFU合成まくらぎへの更新を計画されているのでしょうか?

まず当社で使用している枕木は、全数で約3万本あります。内訳としては木枕木が2万6,048本、PCまくらぎが3,659本、合成まくらぎが130本です。このうち、PCまくらぎは本線の曲線区間の軌間拡大防止を目的に交換を進めています。
橋枕木も今回の第一八東橋梁の他に、同時期に作られた第二八東川、第三八東川橋梁や、岩淵川、細見川橋梁が計画の対象ですね。分岐器についても、合成まくらぎに交換すべく検討を進めています。

雪の中をはしる「昭和号」
雪の中をはしる「昭和号」

私の印象ですが、最近は木枕木が手に入りにくくなっています。輸入材である為に海外との買付の競争が起きているみたいですね。品質も前より良くないと感じています。
加えて地域の特徴として、夏は暑く冬は寒い。ここ若桜駅は山あいの土地ですので、みなさん、涼しいんじゃないですか。と仰られますが、そんなことはなく全国的な猛暑の影響をうけ、とても暑い日が続いております。
とはいえ冬になると一気に冷え込み、12月から3月の間は雪が降って、レールと枕木は雪の下に埋まった状態になります。そうなるといくら防腐剤が塗布されているとはいえ、天然の木には過酷な条件となり10~20年と言われている寿命が更に短くなる傾向ですね。冬の景色はとても良いのですが。

———夏と冬の保線業務についても教えていただけますか

渡辺様 : 主な検査項目としましては「軌道材料検査」、「軌道保守検査」、「保守状態検査」、「巡回検査」の4種です。これらの検査結果に基づき修繕を行います。レールや枕木の交換などの大々的な保線作業は夜間に行っています。ただ、申しました通り冬季は雪のため12月から少なくとも2月いっぱいは工事ができないと想定しています。なので年間12か月のうち9か月の間でやりきる。という計画を立てています。
変わって日々の検査は昼間に行います。レールに摩耗や傷など異変が無いか、日中の列車が走っていない時に歩いて見て行っています。草刈りも日中の作業なのですが、最近の温暖化で草の成長スピードが凄いんです。雪が溶け、春先から芽吹き始めた草木が、この暑い季節になると刈っても刈っても伸びてきてしまいます。私はここ若桜鉄道に来る前は国鉄に入社し、当社路線の起点である郡家駅で接続する因美線の沿線にある智頭(ちず)に配属されました。その後、JRに改組されるなか、鳥取、米子、出雲、浜田と山陰地方のあらゆる路線を経験してきましたが、近年の気温の上昇はちょっと異常とも言えるくらいですね。

桜の山を背景に「八頭号」
桜の山を背景に「八頭号」

ここまでお話しました保線業務は基本は自社で行うのですが、軌道保守検査にある、一般軌道の項目は、JR西日本さんに依頼して、総合検測車に来てもらっています。
新幹線で言うドクターイエローの在来線版という感じの車両ですね。
これらの検査で材料の交換が必要だということになったら、工事計画に基づいて、路線を保有している町の方へ報告を行います。

若桜鉄道株式会社 取締役 鉄道部長 渡辺雅己様
———合成まくらぎへの交換は、補助金が適用されるのでしょうか?
渡辺様 : そうですね。橋枕木や分岐器についても、例えば安全度が上がる。他には延命化。こういった設備投資関係の更新には補助金の申請が可能です。当社の場合、線路や駅施設等は主に若桜町および八頭町が保有し、両町が第三種鉄道事業者として施設を管理されていますので、工事の規模はだいたいこれくらいですよ。と町の方へお伝えし、予算を組んでいただいております。そういう意味でも枕木不良に起因する突発的な補修が必要。ということが発生しないように、合成まくらぎを使用して長寿命化を図っていきたい所であります。

本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。今後もご期待に応える製品づくりに励んでまいります

—— 若桜鉄道に乗ろう! ——

若桜鉄道 SL運転体験
若桜鉄道 わかさカフェのバーガー

若桜線は鳥取県の東部に位置しています。京都から福井にかけての海岸線である「若狭湾」の“わかさ”ではなく、若いに桜と書いて“わかさ“と読む若桜町にあります。
ここ若桜線には、記事中にも紹介の通り、沿線で23もの施設が国の登録有形文化財に登録されており、確かにその1つ1つに凄く歴史を感じられます。駅のベンチに独り座ると、往時のSLの声が聞こえてきそうな佇まいでもあります。そして若桜鉄道さんといえば、SLの体験運転。構内とはいえ、実際のSLを自分の手で運転できる機会なんて、そう経験できるものではありません。体験運転は申込制ですが希望が定員を上回ることもしばしばあるとか。熱心なファンの方は何度もリピートされているらしいですよ。ちなみにSLの横にある給水塔も若桜駅開業である昭和5年からあるとのこと。じっと見学して疲れたら、若桜駅舎のレトロな雰囲気を活かしつつ、令和2年にリニューアルされた駅ナカ店舗『わかさカフェ』でバーガーと飲み物を。ここで味わう時間は何事にも代えがたい経験となりました。きっとまた若桜鉄道に乗りに来たくなりますよね!


Products

今回ご紹介させていただいた製品

ガラス長繊維強化プラスチック発泡体
エスロンネオランバーFFU

製品解説———

エスロンネオランバーFFUは、硬質ウレタン樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した合成木材です。天然木材に代わる素材としてあらゆる分野で使用可能。自然環境保護に役立つ素材として注目されています。

特長
  • 1.天然木材のように

  • 2.プラスチックだから

施工例
  • 1.水処理施設に

    覆蓋

    耐久性に優れ、水に浮く軽さを持ち、万一落下した場合も回収が容易です。長期使用品のリユースが可能でライフサイクルコスト削減にも貢献します。

  • 2.港湾施設に

    浮桟橋

    耐水性・耐食性に優れ防腐処理の必要が無く、水質に影響を及ぼさないため環境に配慮した設計が可能です。

  • 3.鉄道施設に

    合成まくらぎ

    コンクリートと同等の品質安定と耐久性能をあわせ持ちながら木材のように施工でき、鉄道会社各社に採用されています。

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