リコーグループの中核を担うリコーテクノロジーセンターに
文化シヤッター社製 浮力起伏式止水板『アクアフロート』が採用!
エスロンネオランバーFFUの特性を活かし、自動起立で浸水防止

  • #エスロンネオランバーFFU
  • #アクアフロート
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Introduction

日本有数のグローバル企業であるリコーグループ。コピー機の代名詞となるほど普及した『リコピー』などオフィス機器メーカーとして有名ですが、近年は機器だけでなくあらゆるデジタルサービスを通して世界中の働く人たちを支えています。
神奈川県海老名市に立地するリコーテクノロジーセンターは、その広大な敷地にリコーグループの最新技術が集まる一大技術開発拠点です。国内でも指折りの重要拠点であるこの地の水害対策として、文化シヤッター社製の浮力起伏式止水板『アクアフロート』が採用されました。
アクアフロートの止水パネルには積水化学の合成木材エスロンネオランバーFFUが使用されています。FFUの特性である高強度・耐腐食性・軽量性を活かし、ゲリラ豪雨や台風による増水時に水の浮力により自動で作動する止水板が実現しました。
今回はリコーグループ様の水害対策の考え方や、アクアフロートの採用経緯について、ご担当者様にお話を伺いました。

アクアフロート起立メカニズム

インタビュー : 2025年7月15日
リコーテクノロジーセンター

Guest

株式会社リコー
阿部 一博 様
リコークリエイティブサービス株式会社
土門 雅 様 脇ノ谷 勝利 様 星谷 優子 様

Interview

頻発する豪雨 浸水対策にこの一手!

———まずは、リコーグループ様並びにリコーテクノロジーセンターについて教えてください

阿部様 : リコーグループは1936年に創業した株式会社リコーに始まり、現在は約200の国と地域でグローバルにビジネスを展開し、2026年には創業90周年を迎えます。
事業内容としては、創業当時は感光紙の製造・販売からスタートし、コピー機やプリンターのようなオフィス機器メーカーとして広く認知されておりますが、2020年からは「デジタルサービスの会社」として、各種ITサービスやデバイスを組み合わせることによって、皆様のワークスタイルの変革を支援しております。
私は管理部門の一つである人事総務部の総務統括室に所属し、防災安全管理グループのリーダーを務めております。防災安全管理グループでは、国内13か所の生産拠点、10か所の研究開発拠点をはじめ、グループ各社の営業拠点を含めた全465拠点の施設の防災・安全機能に関して、全体的な方針・施策の立案及び実行を行っています。

脇ノ谷様 : リコークリエイティブサービス株式会社は、リコーグループのファシリティマネジメント(施設・環境の管理・活用)、事業所運営やマーケティング支援を行う会社です。
ここリコーテクノロジーセンターは、日本国内の画像&ソリューション製品(複合機・プリンター等)の開発拠点を集約し、要素技術開発から生産技術、製品評価までを一か所に集約したリコーグループの技術開発拠点です。8万8,770㎡の敷地内に11棟の建物があり、製品の研究開発やさまざまな実験が行われています。
私は海老名総務グループのリーダーとして、事業所運営全般(安全・防災・環境・支援)の役割を担っております。

リコークリエイティブサービス株式会社
ファシリティサービスセンター
中日本第一総務室 海老名総務グループ
リーダー 脇ノ谷 勝利 様

星谷様 : 私が所属するファシリティサービスセンターは、本社総務統括室が決定した方針やルールを実際の現場で運用し、従業員が安心・安全・快適に働けるよう支援をする組織です。
その中で、防火・防災の担当を務めており、地震や火災、風水害・噴火など、様々な災害に対する備えや対策を本社総務統括室と連携し、現場への展開を図っております。

土門様 : 私はファシリティマネジメント(FM)事業本部に所属しております。FM事業本部はリコーグループ各拠点の建物や設備のメンテナンス・維持管理を担当しています。
建物の構造や屋根、防水機能の確認から、給排水・衛生設備、空調設備、電気設備、消防設備に、施設内のエスカレーター、エレベーター、監視カメラ、セキュリティなど、施設全体の様々な設備、機能の維持管理を行います。
私は工事をメインで行うCRグループに所属し、今回の止水板「アクアフロート」設置工事も担当させていただきました。

リコークリエイティブサービス株式会社
ファシリティマネジメント事業本部
神奈川支店 海老名CRグループ
エキスパート 土門 雅 様
———水害対策としてアクアフロートをご採用いただきましたが、リコーグループ様のリスクマネジメントの考え方について教えてください
阿部様 : リコーグループでは「リスクマネジメント」を、事業に関する社内外の様々な不確実性を適切に管理して経営戦略や事業目的を遂行していく上で不可欠のものと位置づけ、全ての役員・従業員(契約社員、パートタイマー、アルバイトを含む)で取り組んでいます。
リスクマネジメント体制の中では重点経営リスクを「戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分類して管理しています。「戦略リスク」はリスクをコントロールすることでプラスの影響にもマイナスの影響にもなり得るリスクです。「オペレーショナルリスク」は発生するとマイナスの影響を受けるリスクで、そのリスクを発生させない、または発生しても影響度合いを極小化する対策を取っています。
オペレーショナルリスクには、自然災害などを含む国内外の大規模な災害/事件事故や製品の長期供給遅れ・停止などが考えられます。もしもそのような危機が発生した場合に備えて、状況に応じた被害を想定した初動対応計画(ERP)を作成しています。
そして初動対応の後、様々な危機が発生した場合においても停止できない、もしくは早急に復旧が必要な重要事業/業務を継続させるために実施する事業継続計画(BCP)もあわせて作成しています。BCPは特定の危機に限定しない「オールハザード対応」の考え方を取り入れて、レジリエンスの強化を図っています。
今回のアクアフロートの設置は、ハード面での水害対策の一つですね。
———対策の方針はどのように決定されたのですか

阿部様 : 2020年より、年々増加するゲリラ豪雨や台風による浸水被害が大きく話題となる中で、国内の主要な生産拠点や研究開発拠点から各地の営業拠点まで、国内の全465拠点を対象に水害リスクに対する取り組みの強化を始めました。
もしも大規模な水害に見舞われた場合、ダウンタイムと呼ばれる事業所が使用できない期間が長期にわたり発生してしまうと、お客様のご要望に応えることが出来なくなってしまいますから。

株式会社リコー 人事総務部 総務統括室
防災安全管理グループ リーダー
阿部 一博 様

あわせて、一口に水害リスクと言ってもどのようにその大きさを判断するのか。まずはその基準作りを始めました。国土交通省が公開している洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップを参照しながら、拠点が想定区域に入っていたり、また最新の降雨量をチェックして河川整備の計画規模降雨量を上回っていたりすれば、「水害のリスクがある」という判定基準としています。この基準については毎年2回、4~5月頃と10~11月頃にチェックする運用を続けています。
策定した判定基準に則って全拠点の調査を行うと、465のうち267か所の拠点で水害リスクがあることが分かり、拠点ごとに必要な対策を講じていきました。

例えば、このリコーテクノロジーセンターでは高層ビルが建ち、地下に電気や熱源など重要設備がありますから、地下の水没を防ぐ対策が必要です。逆に工場では地下にはあまり設備はありませんが、1階にある重要な生産設備への浸水対策を重点的に検討しました。
そのようにして対策を進め、2024年度までに全拠点での水害リスク対策が完了しました。リコーテクノロジーセンターでは2022~2023年度にアクアフロートの設置を含む工事を行いました。

———リコーテクノロジーセンターではどのような対策工事がされたのでしょうか

阿部様 : 例えば、最も重要な設備である特高受変電設備は外周に防水壁を設置したり、非常用発電機の設置箇所は嵩上げして水が届かないようにしたりなど、敷地内の建物や設備一つ一つに対してFM事業本部が最適な手法を検討し、その提案を受けて実施しました。
その中で、高さ99mで敷地内最大規模であるC棟のエントランスと社員通用口の2か所にアクアフロートを設置しました。

C棟エントランス 施工前
C棟エントランス 施工前
C棟エントランス 施工後
C棟エントランス 施工後

意匠性を損なわずに設置

———アクアフロートご採用の経緯を教えてください

土門様 : 水害対策工事を行うにあたって、建物への浸水を防ぐにはどんな方法があるのかを調べました。
様々な方法がある中で、増水時に作動して水の浸入を防ぐ止水板の一種として、文化シヤッターさんのアクアフロートを知りました。広島市役所で採用されたという動画をたまたまWebで見つけたことがきっかけです。
人の手を使わずに押し寄せる水の浮力によって作動し、止水が出来るというのは驚きましたね。製品を知った時の率直な感想は「本当に浮くのかな」と。工事の一次下請けである鹿島建設さんに相談しながら各所に最適な止水対策を決定していく中で、地下にある重要設備への浸水を確実に防ぐことが出来る性能面と、お客様が多く訪問されることから意匠面、そして、いつ襲い掛かるかわからない災害に対して24時間365日、自動で確実に作動してくれるという運用面でも、すべての条件に合致するのはアクアフロートしかないと考え、設置することになりました。
設置箇所の横幅はエントランス側が約9m、社員通用口側は約3mあります。

———実際に作動したことはありましたか?

阿部様 : 大雨などによる増水で作動したことは幸いにしてまだありませんが、設置後には試験のために仕切り壁を設け、給水車を使って実際に水を入れて、止水パネルが浮力によって起き上がることを確認しました。
どのような形で動くのか理解はしていましたが、実際に自動で止水板が起立する様子を確認することができました。

土門様 : 疑っていたわけではないですが、しっかりと止水できているところを見て安心しました。上面は石貼りになっており重量もありますが、水の力はすごいですね。実際に動くところを見て、改めてよく考えられた製品だと感じました。
実験により作動が確認できたことで、無事に設置完了となりました。

仮囲いの設置
給水し自動起立を確認

積水化学 : アクアフロートの止水パネルに使用されている合成木材『エスロンネオランバーFFU』は、ウレタン樹脂をガラス繊維で強化した、天然木材の軽量性・施工性とプラスチックの耐久性を併せ持つ素材です。
1974年の発売以来、鉄道まくらぎ、水処理施設の蓋や角落し、造船所の盤木など、様々な分野で幅広く利用されています。
木材と同程度の比重で水に浮かぶことや高い耐水性・耐腐食性に着目いただき、アクアフロートのような画期的な製品に採用され、お客様の浸水対策に貢献できることは大変光栄です。

エスロンネオランバーFFUの特長
天然木材のように
プラスチックだから
———製品について、何かご質問はございますか?

星谷様 : アクアフロートは人の手を介さずに自動で作動することが大きなメリットだと思いますが、もしも増水により作動した場合、水没した止水板には何かメンテナンスは必要になるのでしょうか?

文化シヤッター株式会社/小松様 : 一般的に、ドアタイプやシャッタータイプの止水対策製品ですと扉の中に水を入れる構造になっております。内部機構が水没すると錠前などの部品を交換しなければならないのですが、アクアフロートの場合は浮力を利用したシンプルな構造のため部品の交換などは必要ありません。

リコークリエイティブサービス株式会社
ファシリティサービスセンター
中日本第一総務室 海老名総務グループ
星谷 優子 様

止水パネルもFFUを使用しているため強度があり腐食にも強く、何度水圧を受けても劣化せずに使用可能です。基本的には日常的な清掃をしていただければメンテナンスフリーとなっています。ただ、止水ゴムは10年に1回を目安に交換をお願いしております。
また、アクアフロートは浸水状況や起立・倒伏動作を検知して送信するIoTモニタリングシステムを標準装備しています。この通信に使用する内蔵リチウムイオン電池は最長5年で交換が必要です。アフターケアにつきましても対応させていただきます。

星谷様 : わかりました。今後ともよろしくお願いします。

———リコーグループ様では今後もアクアフロートの採用を検討されているのでしょうか?

阿部様 : 2020年度から実施している水害対策の取り組みは2024年度までに国内の全拠点でひとまず完了しましたので、新たな導入予定は今のところありません。今後当グループに新たに加わる事業所があったり、水害対策に関する国のガイドラインに変更が生じたりした場合には、改めて検討する可能性もあります。
今回の取り組みではアクアフロートだけでなく他にも文化シヤッターさんの止水対策製品を導入しましたので、万が一の時に活躍してくれると頼りにしています。

文化シヤッター株式会社/小松様 : ありがとうございます。アクアフロートについて、より詳しく製品特長を説明した動画を新しく公開していますので、よろしければご覧ください。

アクアフロートはすべての品で漏水試験を行っているのですが、広島市水道局様に設置された製品を出荷する前に、実際に水を張って試験した様子を収めています。もちろん、貴社に納品いたしました2製品も出荷前に試験合格済です。

エスロンネオランバーFFUがリコーグループ様の水害対策の一助となることができ、何よりです。今後も新たな価値を生み出す素材の開発に努めてまいります。
本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございました。

<文化シヤッター様 ご担当者から一言>

文化シヤッター株式会社
環境事業部
止水部長
小松 忠博 様

『冠水が始まったら停電でも無人で確実に作動する止水板』 ひと昔前なら“絵空事”と片付けられていたような製品がアクアフロートです。建物の開口部や地下駐車場のスロープの入り口の床に埋設し、浮力を原理に作動します。製品は浮力と強度が求められる本体に『エスロンネオランバーFFU』を採用。水より軽い比重と長期の耐用年数、強い圧縮強度という素材の特性を活かして夢のような製品が具現化しました。現在では多くの施設でご採用頂いています。

<積水化学 担当者から一言>

機能材事業部
機能材営業部
新規開拓グループ
端﨑 佳乃

取材へご協力を頂きまして誠にありがとうございました。リコーグループ様の危機管理対策のお考えをお聴きし、改めて弊社として社会貢献のあり方を見つめ直す機会となりました。対策を講じられる中で、現場ごとに合わせた製品の選定でアクアフロートをご採用頂きました事、大変感謝しております。そのアクアフロートの一素材であるFFUは、強度がありながらも軽く腐らないという特長を持ち、世の中のインフラを支えています。今後もお客様のご要望にお応えし社会課題解決に努力して参ります。

Products

今回ご紹介させていただいた製品

ガラス長繊維強化プラスチック発泡体
エスロンネオランバーFFU

製品解説———

エスロンネオランバーFFUは、硬質ウレタン樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した合成木材です。天然木材に代わる素材としてあらゆる分野で使用可能。自然環境保護に役立つ素材として注目されています。

特長
  • 1.天然木材のように

  • 2.プラスチックだから

施工例
  • 1.水処理施設に

    覆蓋

    耐久性に優れ、水に浮く軽さを持ち、万一落下した場合も回収が容易です。長期使用品のリユースが可能でライフサイクルコスト削減にも貢献します。

  • 2.港湾施設に

    浮桟橋

    耐水性・耐食性に優れ防腐処理の必要が無く、水質に影響を及ぼさないため環境に配慮した設計が可能です。

  • 3.鉄道施設に

    合成まくらぎ

    コンクリートと同等の品質安定と耐久性能をあわせ持ちながら木材のように施工でき、鉄道会社各社に採用されています。

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