地中熱と風車の排熱を利用した農業×風力発電のコラボレーション!

地中熱の採熱管に積水化学のエスロハイパーAWをご採用!

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能代山本広域風力発電事業
能代市比八田地区 風車外観と実証研究現場

Introduction

大森建設株式会社は1946年秋田県山木郡八峰町にて創業し、以来建設業を中心に運送業、製造業、環境事業、介護サービス、飲食業と地域のニーズに合わせて事業を拡大。
さらに「郷土を愛し、地域に尽くす」を会社スローガンに、次世代へつなぐ地域活力の向上を目指し、風力発電事業や蓄電池事業など多彩な事業を営む中で、秋田県立大学などと連携し、能代市比八田(ひはた)の農地で風力発電用の風車からの排熱と、年間を通じて一定の温度が保たれている地中熱を農業用ビニールハウスに共有する再生可能エネルギーの実証研究を行っています。風車の排熱と地中熱を有効活用した国内初の取り組みと思います。
厳冬期のビニールハウス内を温める燃料の削減・CO2排出量削減が期待できる未利用エネルギー活用による持続可能な農業を目指しています。この地中の熱を採熱するための配管・採熱管に積水化学の「エスロハイパーAW」が採用されました。その採用の経緯や今後の風力発電の展望、電力通信管に対する想いについて大森建設株式会社 取締役 執行役員 技術営業部長の石井様にお話をお伺いしました。

インタビュー : 2025年8月21日

Guest

大森建設株式会社
取締役 執行役員 技術営業部長 石井 昭浩 様

Interview

———まずは、大森建設様についてお教えください

石井様 : 弊社は陸上の土木工事・建築工事、それから海洋土木工事とその一環として風力発電の各種開発をおこなっております。併せて風力発電機の点検やメンテナンスも弊社で行っております。お陰様で秋田県の総合建設業では売上トップとなっております。
私は取締役 執行役員 技術営業部長という役職をいただいており、官公庁向けの特に土木系の営業を担当しています。全社的な技術指導や、新技術の導入検討も担当しております。また、陸上風力発電の事業全体のプロジェクトリーダーも担っています。

大森建設株式会社 取締役 執行役員
技術営業部長 石井 昭浩 様
———能代山本広域風力発電事業について教えてください

石井様 : 一言で言いますと「地元企業による地元のための風力事業」です。能代市・八峰町は強い季節風の吹く地域性があり、古くから厳しい海風による飛砂を防ぐ「防風林」が必要とされるほど、日本海側からの風に苦慮していました。
一方で近年の地球温暖化等の環境問題の顕在化・エネルギー自給率の向上の観点からも風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーが注目されています。ここ能代では日本海側からの強い季節風をかけがえのないエネルギー資源として見直し共生の道を歩んでいます。
「能代山本広域風力発電事業」では地元資本主体で風力発電事業を行い、風力発電で得られる恩恵を地元地域へ還元することで地域貢献の実現を目指しています。その一部で、農業と風力発電のコラボレーションとして、風車の排熱・地中熱を活用しビニールハウスで熱受給をする実証研究を行っています。いずれは地元の方に恩恵のある農業システムとして持続的な脱炭素化通年農業の実現を支援しWIN-WINの関係となることを目指しています。
この、地中熱の採熱管に積水化学さんのエスロハイパーAW採熱管を採用した訳です。採熱効果の設計や検証は秋田県立大学さんに協力いただき進めています。実証研究には多くの自治体や大学が関心を示しており、特に大学は東北から九州まで多数の方が見学に来られています。もちろん秋田県立大学さんがもっとも多く見学されていますが。

比八田地区 風車とビニールハウス
———工事の概要について教えてください

石井様 : まず、事業についてもう少し詳しくお話ししますね。
事業会社として白神ウインド合同会社を設立しました。合同会社は地元企業主体および自治体で構成されており、工事関係は可能な限り地元企業で施工しました。
能代市と八峰町で25基の陸上風車を運転しており、そのうち農地に建設した11基に地中熱の採熱管を埋設しています。風車は全長147mでプロペラの直径は115.7m。風車建設時の基礎掘削基面にエスロハイパーAW採熱管をぐるぐると敷設し、熱交換された循環水(不凍液)を冬は暖房(地中熱+排熱利用)、夏は冷房(地中熱利用)で活用し、ビニールハウスに設置されたコントローラーで空調の操作・管理を行っています。地中配管の再熱効果の実証データ検証は、運転を開始した2025年3月より1年間を予定しています。現在秋田県立大学さんでデータの検証をしておりますが、AC電源をDC電源に変換する際の余剰排熱を含めた上で、夏場でビニールハウスの中の室温が5℃下がるなど、採熱による効果がしっかりと確認できています。

制御コントローラー
風車の排熱口
———採熱管はエスロハイパーAW以外に候補はあったのでしょうか。また、採用の決め手があれば教えてください

石井様 : 私は日本雪工学会に所属しており、秋田県立大学のシステム科学技術学部の先生方とは古くからの付き合いでして、そのなかに地中熱の第一人者と言われる先生がいらっしゃって、採熱管の見本を大学で見せていただいたのが始まりでした。黒いパイプと青いパイプ。その青いパイプが積水化学さんのエスロハイパーAWでした。
私どもは地中熱に関するノウハウはほとんどない状態でしたが、やっぱり初めての取り組みなので失敗するわけにはいかないというプレッシャーもありました。
積水化学さんのパンフレットがしっかりしていたことも大きいですが、これまで管工機材全般で積水化学さんにはいろいろとお世話になっていましたし、営業担当の方も非常に熱心でしたので、今回、積水化学さんのエスロハイパーAWを採用させていただきました。

エスロハイパーAW基礎底面への採熱管設置
(地中内温度=11~12℃)
———採用して良かった点や今後の改善点などはありますか?

石井様 : そうですね。まず、良かった点としては、融着施工が初めてでしたがしっかりと施工講習会をしていただいた点ですね。
丁寧に一通りの施工方法を教えていただきました。スクレープ等の手順忘れが無いように、気を付ければまったく問題ないと施工部隊からは聞いていました。また、採熱管をぐるぐると配管するのも慣れてくれば楽だったと報告を受けていました。
またもちろん製品によるとは思いますが、製品を採用した後も、今回のようにエスロンタイムズの「現場レポート」など採用者の声をしっかりと取り上げ、かつ発信するサービスがある会社はとても貴重です。当社では能代市と災害協定を結び、風力発電した電気を被災時には地元の市民が電気自動車等に無償で使用できるように蓄電池施設を立上げるなど独自の体制をとっているのですが、こうした取り組みもこの現場レポートを通じて是非知っていただきたいと思っています。
しっかりと東日本セキスイ商事さんで在庫対応や物流手配対応をスムーズに行っていただき納期として特に問題はなかったのですが、特注製品の手配納期が多くかかることが改善されればもっと使いやすくなると思います。

エスロハイパーAW樹脂製ヘッダー
———風車から変電所や蓄電施設に電気を送る際の電線類は地中化されているのでしょうか
機器収納庫の熱源タンク・熱交換器・冷温水タンク

石井様 : はい。風車の電線類はほぼ地中化をしています。一部、川を渡る所は地上の送電線にしていますが、全体の95%以上は埋設されていますね。そのため風車の電線類の地中化で使用する電力ケーブル保護管は使用する数量も多く、材料面・施工面いずれでもとても重要となります。

———現在は、電力ケーブル保護管(電力管)はどんな管材を使用されているのでしょうか。
石井様 : 現在は主に蛇腹管(FEP)を採用しているのですが、この蛇腹管は継手部に止水性能がほとんどないため、接続部の継手から水が入ってしまわないかという心配があります。
送電線は1本300mくらいですが、今回のように地中化部が70kmもあると、おおよそ300m毎にハンドホールを大量に設置しないといけないのですね。
直線部分であれば問題はないのですが、地下水があると、ハンドホールとの接続部や継手部分から水が入ってしまって、それが後々漏電の原因になってしまうなんてことも起こりえます。
また管自体が潰れやすく、施工の際に巻き癖補正などの手間が多いことも実は大変なネックになっています。
そういった面では御社の止水性に優れた塩ビ製の電力通信ケーブル管が最適なのかなと思っています。
———今後の採熱管のご採用の予定はありますでしょうか。また、新たに発売された電力ケーブル保護管ECVPの印象はいかがでしょうか?

石井様 : まず、エスロハイパーAWについては今後ますます需要が高まってくるのではないでしょうか。今後、秋田県立大学さんとビニールハウスに設置した空調設備の省エネ効果をしっかり見ていきながら、引き続き採用検討していきたいと考えています。
また電力ケーブル保護管については、今回は残念ながらご提案いただいた積水化学さんの硬質塩化ビニル樹脂製のCCVPでは価格が合わず、先ほど申し上げた蛇腹管(FEP)を採用していましたが、この度積水化学さんで新しく発売されたECVPは国土交通省にて低コスト管路材に位置付けられ、価格も手頃となっており、大いに期待しています。
蛇腹管(FEP)の困りごとも解決できますし、今後の工事ではECVPを採用検討したいと考えています。また、営業担当の久慈さんからは、RCPやクロスウェーブなども提案していただいていますので今後の工事で併せて採用検討していきたいと思います。

積水化学 電力ケーブル保護管ECVP

積水化学 久慈 : ECVPはおっしゃる通り、令和6年3月に耐衝撃強度がツルハシ衝撃試験からスコップ衝撃試験に見直しとなり、「国土交通省の無電柱化のコスト縮減の手引き」で低コスト管路材として記載されたことで大変好評を得ております。止水性もあり安心して地中配管でご採用いただければと思います。

———最後に、積水化学へのご要望があれば教えてください

石井様 : 細かい製品のことでは、採熱管として採用したエスロハイパーAWについては、推奨する不凍液をカタログに記載して欲しいです。材料選定の際にさらに使いやすくなりますので。

あと地上風力発電全般においては、「電力不足を補うという社会課題解決」と「カーボンニュートラル」を行う再エネルギー事業ということだけでは地元住民への説得材料としてはまだまだ足りないのです。実はさらに地元住民への「裨益(ひえき)」があることが重要となってきます。 「裨益」とはあることの助け・補いとなり、利益となること。役に立つことをいいます。単にその再エネルギー事業が地元住民へ利益を還元するだけでもダメですし、もちろん自社の営利目的だけでも事業を行うことはできません。 発電用の風車を導入した地元住民にWIN-WINの構造を示し、貢献していくことが求められています。
弊社としてはこのような地元住民への裨益還元の取り組みをしっかりと情報発信し、今後も再エネルギー事業に取り組んでいきたいと考えています。 積水化学さんには管材製品全般における材料のご提案にも引き続き大いに期待していますが、さらに是非、地元住民への情報発信などのご協力を得られたら幸いです。

ありがとうございました。今後もご要望にお応えできる品揃え・施工性・環境貢献へのご提案、また地元住民さまへの情報発信にお役に立てできますようご協力させていただきます。

「新たな風をつくる」カーボンニュートラルを秋田から

風の松原風力発電所(2016年12月運転開始)

大森建設を主体とする秋田県内9社と能代市が出資する特別目的会社(SPC)である「風の松原自然エネルギー株式会社」による、東北電力への全量売電を目的とした事業。2022年、経済産業省の「地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰」の顕彰事業に採択されました。

白神(しらかみ)ウインドパワー風力発電所(2025年3月運転開始)

白神ウインドパワー風力発電所は、秋田県能代市および山本郡八峰町(はっぽうちょう)に設置された、大規模広域ウインドファームです。能代市内に17基、八峰町内に8基の風車が建設され、合計25基の風車で構成されています。
細かく分類すると、以下の4つの発電所から成っています。

【白神ウインドパワー発電所】
  • 峰浜(みねはま)風力発電所 秋田県能代市および山本郡八峰町|6基|23MW
  • 落合(おちあい)風力発電所 秋田県能代市|7基|27.6MW
  • 水沢(みずさわ)風力発電所 秋田県山本郡八峰町|4基|13.8MW
  • 比八田(ひはた)・朴瀬(ほのきせ)風力発電所 秋田県能代市|8基|32.2MW
【風力発電×地中熱×農業】
脱炭素化通年農業実施の相互関係による風力発電導入拡大!

農家はビニールハウスでの熱受給によるコストダウン!

風力発電事業者は少ないイニシャルで事業展開が可能!

未来志向の取り組みによる脱炭素化通年農業を実施

風力発電設備の地下埋設パイプから採取する地中熱および風車から排出の排熱を、能代の戦略は作物(白神ネギ、山うど、アスパラガス)の育苗および栽培されるビニールハウスに、JAや農家とも連携しながら供給することで、風車由来の熱エネルギーを活用した脱炭素通年農業の実現を支援しています。

未利用熱の有効利用で
WIN-WIN構築
白神ネギ

地元業者と能代市による事業で地域主導の活性化に取り組んでいます

経産省に評価された取り組み 事業者×地域の連携推進

都市やまちの再開発、農山漁村での再生可能エネルギー事業について、地域の魅力向上や地域経済の活性化を目指し、地域の課題解決に取り組んでいる事例として、経済産業省の「地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰」として事業顕彰を受けました。地元業者と能代市による事業のため、地域主導の活性化が期待できます。

安定した電力供給を目指して

より安定した電気供給ができるよう、国内最大級の「大型蓄電池」を設置。災害時も稼働できます。蓄電池による変動緩和制御によって、災害時に蓄電池から防災拠点へ高品質な電気供給を行えます。また、風車の自立運転を可能にし、2週間以上に亘って電力の供給を行えます。

蓄電池施設

災害協定で地域を守る

風の松原蓄電池施設に充電装置を設置

災害などによる有事には、電気自動車用急速充電器から能代市所有の電気自動車やスマートフォンなどの情報端末へ無償で電気供給を行う、能代市・風の松原自然エネルギー株式会社・大森建設株式会社での三者災害協定を締結しています。
地域の子どもたちのエネルギーや環境への意識を育てるためのイベントをなども企画しています。

<営業担当から一言>

東日本営業部
首都圏設備システム営業所
建築グループ
中田 穣
(旧 東北設備システム営業所所属)

当初、お話を頂いた時は、風力発電と地中熱利用とが結びつかなかったのですが、発電と温水のハイブリットによるハウス栽培利用とお聞きしました。図面などではイメージを持ったのですが、いざ地中部の配管敷設、風車設置の模様を拝見しますと、そのスケールの大きさに驚かされました。そんなプロジェクトに関わらせて頂きましたこと大変嬉しく思います。弊社でもカーボンニュートラルへの取り組みとして、管工機材製品のLCAデータの提示なども開始しております。引き続き弊社製品のお引き立ての程、是非よろしくお願いいたします。

<営業担当から一言>

管材土木営業部
電力・通信グループ
久慈 匡

当時は東日本セキスイ商事という立場にてお世話になりました。
今回の現場レポートでは、わざわざ現場にお越しいただき誠にありがとうございました。実際に蓄電池施設も見学させていただき、この事業にかける情熱・熱い想いを強く感じることができました。このような素晴らしい事業に携われましたことを非常にうれしく思います。御社の貴重な取り組みを皆さまにお伝えする情報発信の部分でも微力ながら貢献してまいりたく思います。
立場が変わりまして、再エネ関連電力通信保護管の担当となりました。既にご紹介させて頂いております「電力ケーブル保護管ECVP」などの新製品含めて、より一層のご愛顧をいただきたく、是非よろしくお願いいたします。

Products

今回ご紹介させていただいた製品

水道用耐震型高性能ポリエチレン管 エスロハイパーAWシリーズ

製品解説———

水道用高性能ポリエチレン管(エスロハイパー)は、これまで耐久性、耐食性、耐震性から水道本管(配水管)として豊富な採用実績と高い評価を得てまいりました。エスロハイパーAWシリーズでは、敷地内埋設配管、給水立て管、ピット、天井配管、地中熱採熱管、埋設消火管などの用途で、高い信頼性を有するオール樹脂管路を構築しています。

特長
  • 1.耐食性

    高性能ポリエチレン(PE100)の使用で錆びなし! 漏れなし! 赤水なし!

  • 2.耐震性

    埋設配管で実績をつんだ水道用耐震型 高性能ポリエチレン管を採用

  • 3.省力化

    信頼のEF接合、軽量・柔軟な管材、保温レス可能により施工工数の省力化とトータルコスト削減

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電力ケーブル保護管 ECVP

製品解説———

ECVPは、従来電力管(CCVP)と同寸法で耐衝撃性以外は高温下でもほぼ同性能となっており、電線共同溝における耐衝撃性の緩和に応じて開発された「低コスト電力管」です。
国土交通省「無電柱化のコスト削減の手引き」(令和6年3月)で低コスト管路材として記載された電力管です。

電力管ECVP

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