天然木材からの切替で環境貢献・性能UP!
-
- ――――まず、今治造船様について教えてください。
当社は名前の通り愛媛県今治市に本社を置く造船会社です。
本社・今治工場の他、瀬戸内海沿岸にグループ全体で14の造船所および製造拠点があり、コンテナ運搬船やばら積み運搬船、タンカーやカーフェリーなど各種鋼船を建造しています。各工場により建造する船の大きさや目的は違ってくるのですが、ここ西条工場は全体で2番目に大きなドックを保有していて、主に大型船舶を建造しています。
- ――――建造中の船舶も工場設備も巨大で驚きました。
-
初めての方は皆さん驚かれます。
西条工場でこれまでに建造された最大の船は、20フィートタイプの海上コンテナが2万個積載できる世界最大級のコンテナ運搬船です。全長は399.98mに及びます。ドックの長さは420mですから前後10mしか余裕がないくらいでした。
船舶は基本的に一隻ごとにお客様の要望に合わせてオーダーメイドで設計され、8か月から10か月、場合によっては1年以上かけて建造されます。完成してお客様に引き渡すときの達成感もひとしおです。
- ――――大澤様が担当されているのはどのような仕事なのですか?
- 私が所属する施設管理チームの仕事は大きく分けて三つあります。
一つは工場内にあるクレーンの運転・管理業務です。西条工場の象徴ともいえるドックにまたがるように設置された3基のゴライアスクレーンや、それらを超える高さのジブクレーン、建屋内の天井クレーンの操作や維持管理をしています。
次に工場内の運搬業務。船舶のパーツである船体ブロックのような大きなものから小さなものまで、造船所内の物流を担っています。
それから場内設備の管理。電気・ガス・水道や建屋の維持管理、設備の増強などの仕事です。直接船の建造に関わるわけではない間接業務ですが、円滑に建造が進められるように工場内のインフラを整備する安定稼働のために重要な仕事です。電気やガス、水道はあって当たり前ですし、クレーンが動かないようなことがあれば工程遅延が起きてしまいますからね。
- ――――積水化学の合成木材FFUは、どんなところにご採用いただいたのでしょうか?
-
-
FFUが関わっているのは先にお話しした船体ブロックの運搬業務です。
まず先に、船のつくり方について説明します。鋼船を建造する場合、ブロック工法と言って船体を数十ものブロックに分けて製造してからそれらをドック内で溶接でつなぎ合わせて完成させます。船体ブロックは一つにつき数百トンもありますから普通のトラックでは運搬できません。ブロックキャリアという特殊な車両に載せてドックに運ばれるのですが、ブロックを載せる時には盤木(ばんぎ)という角材を荷台と船体の間にかませて緩衝材にしています。FFUを使用しているのは、この盤木です。
船体ブロックは鉄板と骨組みから出来ています。ブロックを直接荷台に載せてしまうと強度の低い鉄板部分に力がかかり、曲がってしまいます。それを防ぐため、骨組み同士が交差する強度の高い数箇所を点で支えなければならない。そこにFFU製盤木を置いています。サイズは20×30×40cmの直方体ですが、一つにつき30トンもの重さを支えています。
- ――――採用に至る経緯を教えてください。
- FFUを採用する前は天然の木材を盤木に使用していました。
セランガンバツ材という東南アジアの熱帯林で生産される木材です。ですが、近年は干ばつなどの影響もあり森林資源が減っていることから納期の遅れや品質の低下が頻発していました。
安定的な供給が見込めず、環境保護の観点からもセランガンバツ材を使用し続けることは難しく、代わりとなる材料を探すことになりました。
材料変更を検討し始めてから最初に試したのは、再生プラスチック製の樹脂盤木です。何度か試験を行いましたが採用には至りませんでした。
盤木の性能として重要なことは、船体ブロックの重量に耐える強さはもちろんなのですが素材のしなやかさも大きなポイントになります。天然木材による盤木の場合、耐久性が減り交換時期を迎えるとだんだんと潰れるようにひしゃげていき目に見えて劣化がわかります。完全にダメになってしまう前に対応することができる。しかし樹脂盤木の場合、ある日突然限界を迎えてパーンと弾けるように壊れるんです。作業者に危険が及ぶかもしれないし積み荷が崩れて大事故に繋がる可能性もあります。
様々な素材を検討する中で積水化学の営業担当である中澤さんを通じてFFUを知り、試してみることになりました。FFUはウレタン樹脂だけでなくガラス繊維により強化しているからか通常の樹脂盤木よりも天然木材に近いしなやかさを持っています。
盤木として正式採用できるように、テストの度に要望を伝えて繰り返し改良を重ねてもらいました。
エスロンネオランバーFFUの特長
【積水化学営業担当・中澤】
はじめは飛び込みで資材課様に訪問させていただいたのですが、社内で資料を回覧していただき大澤様の目に留まったと伺いました。偶然にも新素材を検討されているタイミングであったことは幸運でした。試験中にFFU盤木が割れてしまった時はどうなることかと思いましたが…。
【大澤様】
そう。割れてしまったことがありましたね。採用は難しいかなとも思いましたが、FFUに金属のボルトを埋め込むことで、鉄筋コンクリートのように強度アップが図れるのではないかと考えたんです。金属ボルトを埋め込むという加工は初めてのことだったと伺いましたが、提案をしっかりと聞き入れてくれてできた盤木は期待どおりの強度でした。ボルトを埋め込んだ試作品を使ってブロックキャリアで運搬作業している時、接触により船体ブロックがずれてしまうことがあったんです。同時に盤木にも大きな力がかかりましたが壊れずに持ち堪えてくれました。もしボルト入りでなかったら、ブロックが倒れて大きな事故になっていたかもしれません。性能が十分確認できたことで正式に採用が決まりました。
- ――――FFUを採用して感じたメリットを教えてください。
-
セランガンバツ材よりも盤木が長持ちするようになりました。木製盤木の使用期間は3~4か月ですがFFUは10~12か月と、3倍以上の耐久性があります。
費用に関しては、購入費は木材よりも高いですが長持ちする分ライフサイクルコストで比較すると高くはありません。それに、更新の機会が少ないということは廃棄や調達に関わる業務負担を減らすことにも繋がります。
天然木材を使用しないことで森林保護に繋がり、環境貢献が出来るということも大きいですね。西条工場はISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を受けていますが、その審査員にもFFU盤木の話をしたところ好評でした。
それから、現場の作業者も喜んでいますよ。セランガンバツ材の盤木は一つにつき約27kgもありますが、FFUの盤木は約18kgです。ブロックキャリアの荷台に盤木を設置するのは人の手で行っていますから、軽量化により作業性・安全性が大幅にアップしました。木製の盤木にはもう戻れないと話していましたよ。性能だけでなくコスト面、環境貢献、作業性と総合的に見てセランガンバツ材よりも良いものができたと思います。失敗しても諦めずに一緒に考えて改良を続けてくれた結果です。
――――今後もご要望にお応えできるよう、製品改良に努めてまいります。
本日はお時間をいただきありがとうございました。
<営業担当から一言>
「FFUの軽量性・強度(耐久性)が評価された用途です。コストが心配でしたがLCC(ライフサイクルコスト)の観点から採用に至ったことは大変うれしく思っております。改めて現場の要望に応じた対応が可能というFFUの利点を実感致しました。環境問題やウッドショックが叫ばれている中、社会の課題に解決できる商品開発に今後も務めて参ります。」