平常時も景観を損ねません

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災害時にはアクアシャッターf が自動で起立

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広島市役所 エントランス

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平常時も景観を損ねません 災害時にはアクアシャッターf が自動で起立
広島市役所 エントランス

エスロンネオランバーFFUを採用!
宇根鉄工所の浮力式防水板「アクアシャッターf」

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Introduction

広島県東広島市の株式会社宇根鉄工所は、高潮や台風時の洪水・農業灌漑対策用の水門から、BCP対策用防水板・防水扉などを設計・製造しています。
同社の主力製品である浮力式防水板「アクアシャッターf」は、各種水門で培った技術を進化させ開発された、浸水により発生する浮力を利用して全自動で作動する画期的な防水板です。
この「アクアシャッターf」に使用されているのが、積水化学の合成木材「エスロンネオランバーFFU」です。
様々な材料で試行錯誤を重ねた結果、FFUが採用されたポイントとは何だったのか。宇根代表取締役に伺いました。
インタビュー : 2022年4月15日

Guest

株式会社宇根鉄工所
代表取締役 宇根 利典様

Interview

FFUだからこそ実現した浸水対策用防水板

――――まず、宇根鉄工所様について教えてください。
株式会社宇根鉄工所 代表取締役 宇根 利典様

当社は1916年(大正5年)に創業し、私で4代目になります。建築用の装飾金物の製造に始まり、金属加工技術を活かして鉄骨や船舶艤装品などを作っていました。
昭和30年代の高度経済成長期、祖父の代に公共事業に参入し、水門や陸閘などのゲート事業が始まりました。その後、父が土木工学を専攻し橋梁を専門としていたことから、歩道橋などの橋梁事業も手掛けるようになり、主力製品となっていきました。形は違えど、金属を加工する技術が基礎となっています。

――――2012年には、防水板「アクアシャッター」をはじめとするBCP(事業継続計画)対策事業がスタートしました。

近年、ゲリラ豪雨などによる都市部の浸水被害が頻発するようになり、その被害を最小限に抑えて事業の継続や早期の復旧を図るBCPの取組みが広まる中、水門や防潮ゲートで培った長年の技術が活かせると考えました。そうして生まれたのが防水板・防水扉の「アクアシャッター」シリーズです。

アクアシャッターf 設置風景
――――「アクアシャッター」はどのようなノウハウを用いて誕生したのでしょうか?
アクアシャッターは、水道水圧により起伏する防水板です。その原型となったのは、昭和63年に完成した宮島(厳島)の起伏式防潮扉でした。
――――30年にわたって日本三景を守る貴社の代表的な施工事例ですね。詳しく教えてください。

海に面している宮島の世界遺産・厳島神社とその参道は台風発生時にはたびたび浸水被害に悩まされていました。ですがスライド式やスイング式の防潮ゲートを設置しようにも、海と山に挟まれた地形ですからゲートを開閉するスペースがとれない。また景観保護の観点から、大規模な堤防は好ましくありません。そこで、起伏式の防潮扉を設置することになりました。厳島神社参道の石鳥居と商店街の間の地面に防潮扉が格納されていて、非常時には立ち上がり高潮による被害を防いでいます。
実は、この技術は宮島の起伏堰がはじめてではなく、元々は河川内に設置する農業灌漑用の起伏堰で活用していたものなんです。扉体の通過耐強度を上げることで陸上での使用が可能になりました。
河川用の起伏堰や宮島の防潮ゲートは、電動の油圧シリンダーで作動しますが、災害時に停電が起きても作動できるように、「アクアシャッター」では水道水圧を動力としました。更にもし断水した時には、操作ボックスに収納された自転車の空気入れでも作動できるようになっています。

宮島の防潮ゲート
――――「アクアシャッター」はステンレス製ですが、「アクアシャッターf」ではFFUをご採用いただきました。なぜFFUを選ばれたのでしょうか?

シリーズの一つである「アクアシャッターf」の材料として、積水化学さんの合成木材「エスロンネオランバーFFU」を採用しています。

「アクアシャッターf」の最大の特長は、降雨で貯まった水により発生する浮力を利用して自動で動作することです。
開発のきっかけは、手動操作の「アクアシャッター」を販売する中で、お客様から「自動式の製品は無いのか」というお声をいただいたことでした。「アクアシャッター」は手動でレバーをひねることで動作します。人の手で操作して安全確実に動作できるということが安心につながると考えたからです。
ところがお客様の生の意見としては、意外にも自動式を求める声が多かったのです。災害はいつ起こるか分からず、夜間や休日などに災害が発生した場合、防水板を確実に操作できる人員を適切に配置できるかは分からない、ということが理由でした。
そこで、災害時に自動で作動する防水板の開発を始めました。

FFU製品写真
――――FFUを採用されるまでの経緯を教えてください。

自動で作動するための機構として、浮力を利用することを考えました。雨による増水によって生まれる浮力により地面に格納された防水板が浮上がり、自動で起立する仕組みです。
浮力式防水板の材料として必要な性能は大きく3つあります。まず、浮力により作動するため比重が軽いこと、次に、格納時には車両の通行にも耐えられる強度、そして、吸水せず腐食に強い防水性です。
色々な素材を試しました。はじめに検討したのはFRP成形品です。ですが、メーカーの方にも相談したところ、FRP成形品は指定サイズで製作するにはある程度のロットが必要で、フルオーダーで現場に応じたサイズや仕様を提供するには向いていませんでした。
他にも、樹脂発泡体を芯材としてガラスファイバーで覆ったプレートを検討したのですが、強度や仕上がりで満足いくものがなかなか見つかりませんでした。
そんな時、積水化学の営業担当である中澤さんに出会い、FFUで試してみることになったんです。

エスロンネオランバーFFUの特長
エスロンネオランバーFFUの特長

元々、当社で製造する角落しで使用していたこともあり、FFUのことは知っていました。比重が軽く水に浮き、法面を補強する受圧板や鉄道のまくらぎに使われるほど強度もある。計算上も問題なく、これならいけると思いました。

――――どのように採用が広がっていったのでしょうか?
防災や環境に関する展示会への出展をきっかけにデベロッパーや代理店から声がかかるようになり、首都圏のマンションを中心に採用していただいています。その他にも、地元の広島市役所や、大阪の百貨店、地下鉄や空港などの公共施設とジャンルを問わず、北海道から沖縄まで、さまざまな都道府県で採用実績があり今では当社の主力製品です。
――――「アクアシャッターf」の製造にあたってのこだわりは何でしょうか?
地下駐車場出口に設置されたアクアシャッターf

品質には徹底的にこだわっていますね。
「アクアシャッターf」はすべてオーダーメイドで、一つとして同じものはありません。設置場所の広さや必要な止水高さや格納時の外観まで、お客様の要望に合わせて現場ごとに最適な仕様で設計・製造し、1基ずつ水張検査を実施してJIS規格で定められた最高等級の止水性能(Ws-6)が発揮できることを確認してから納入しています。
設置幅も1mのものもあれば、10m以上になることもあります。FFUは希望に合わせた寸法で発注できるので、非常に助かっていますよ。連結すればさらに大きな幅に対応可能です。

浸水対策製品を比較した時、土のうが最も安いですが、設置・撤去に多大な労力を必要とする上、処分に費用がかかります。差込式の止水板も比較的安価で土のうより作業効率は上がりますが、操作訓練や収納場所が必要になります。また広い開口部には不向きです。電動起伏式はコストが高く、またメンテナンスにも費用がかかります。これらのデメリットを解消できるのが浮力式防水板です。
「アクアシャッターf」に限らず当社では、高い付加価値を持つ製品を開発し、お客様の幅広いニーズに応えていくことを心掛けています。

アクアシャッターf 起立・倒伏の様子

基本動作_アートボード-1
――――設置後の管理はどうされているのでしょうか?

設置してからは日常的な排水口の清掃をしていただくだけで、定期的な点検は必要ありません。ただ止水ゴムには耐用年数がありますので、10年ほどでの交換を推奨しています。 また、IoTシステムによりインターネットを通じて作動履歴が分かるようになっており、メールでお客様にも作動を通知することができます。浸水の有無や防水板の起伏状況が遠隔で把握できることで、安心につながるのではないかと思っています。

――――「アクアシャッターf」が実際に浸水被害を防いだ事例をお聞かせください。

広島県外の設置第一号となった、静岡県沼津市のマンションで作動したことはよく覚えています。設置されているのは機械式の立体駐車場の入口です。降った雨水は上から下へ流れていきますから、駐車場下層の車両は水没の危険が大きいんです。浸水時に防水板が起立したことで、大切な車を守ることができたので、ほっとしました。

平常時の風景(平伏時)/非常時の風景(起立時)
平常時の風景(平伏時)
非常時の風景(起立時)
――――被害の防止に貢献することができ、何よりです。今後、FFUを使用した新製品の開発予定はありますか?

「アクアシャッターf」を、港湾用の防潮ゲートとして設置できるように改良を加えています。
防潮ゲートは雨水による浸水とは異なり、波が打ちつける波圧がかかるため、「アクアシャッターf」をそのまま利用することはできません。開発に当たっては広島大学の研究室と協力して試験を行い、波圧の減衰機構を製品化しています。

――――最後に、積水化学への要望がございましたらお聞かせください。
オーダーメイドでその都度仕様に応じた設計をしている関係上、納期がある程度かかってしまうのですが、更に早くしていただけると非常に助かります。
また、FFUのおかげで「アクアシャッターf」を開発できましたが、まだまだ更なる可能性を感じています。例えば、金属との複合材とすることで、今よりも厚みを減らしながら強度が確保でき、スパンが伸ばせると思うんです。良い製品だと思うからこそ、今後も一緒にチャレンジがしたい。是非ご検討をお願いします。

――――今後も暮らしの安全を守るお手伝いができるよう、製品開発を進めてまいります。本日はお時間をいただきありがとうございました。

<営業担当から一言>
「合成木材FFUを素材として用いた 防水板”アクアシャッターf”は、他社製品も含めた従来品と比較しても多くの付加価値を持っています。直近の課題である防災対策に加え、SDGsにも貢献する製品ではないでしょうか。
今後も河川・港湾・空港・建築等、さまざまな分野での需要が見込まれるのではないかと思っています。」

営業・中澤さま
西日本支店 近畿土木システム営業所 中澤

Products

今回ご紹介させていただいた製品

ガラス長繊維強化プラスチック発泡体
エスロンネオランバーFFU

製品解説――――

エスロンネオランバーFFUは、硬質ウレタン樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した合成木材です。天然木材に代わる素材としてあらゆる分野で使用可能。自然環境保護に役立つ素材として注目されています。

特長
  • 1.天然木材のように

  • 2.プラスチックだから

施工例
  • 1.水処理施設に

    覆蓋

    耐久性に優れ、水に浮く軽さを持ち、万一落下した場合も回収が容易です。長期使用品のリユースが可能でライフサイクルコスト削減にも貢献します。

  • 2.港湾施設に

    浮桟橋

    耐水性・耐食性に優れ防腐処理の必要が無く、水質に影響を及ぼさないため環境に配慮した設計が可能です。

  • 3.斜面防災に

    受圧板

    施工性に優れているため、工期短縮やコスト削減に寄与します。また、柔軟な設計対応力で、現場にマッチした製品を提案しています。

  • 4.鉄道施設に

    合成まくらぎ

    コンクリートと同等の品質安定と耐久性能をあわせ持ちながら木材のように施工でき、鉄道会社各社に採用されています。

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