肱川ひじかわ河川激甚災害対策特別緊急事業のうち、
排⽔樋⾨の「⾓落し」に、積⽔化学⼯業の
エスロンネオランバーFFUが採⽤されました︕

  • #エスロンネオランバーFFU
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肱川右岸如法寺箇所 排⽔樋⾨

Introduction

四国の⻄側、南予と呼ばれる地域に位置する⼤洲市。⼤洲盆地を中⼼に、北は瀬⼾内海、南は四国⼭地に囲まれ、⼤洲盆地の中央には清流・肱川(ひじかわ)が流れます。
また江⼾時代には⼤洲城の城下町として栄え、今も肱川のほとりには、当時の⾯影を残す町並みが広がっています。
しかし、こうした美しい⾵景の⼀⽅で、肱川流域は古くから⽔害と向き合ってきた地域でもあります。その歴史の中でも、特に⼈々の記憶に深く刻まれているのが平成30年7⽉豪⾬(⻄⽇本豪⾬)です。
2018年6⽉末、台⾵7号の影響で⻄⽇本各地に⼤⾬が続き、7⽉8⽇には⾼知県・愛媛県に⼤⾬特別警報が発表されました。肱川の⽔位は急激に上昇し、昭和38年以降の記録で最⼤となる8.11mを観測。これは氾濫危険⽔位を2mも上回る、まさに“想定を超えた豪⾬”でした。昭和初期から段階的に河川整備が進められてきた肱川ですが、部分的に低かった堤防から越流が発⽣し、⼤洲市を中⼼に広範囲で浸⽔被害が発⽣してしまいました。

この甚⼤な被害を受け、再び同規模の洪⽔が襲ってきても氾濫を防ぐため、肱川河川激甚災害対策特別緊急事業(通称:激特事業)が平成30年度に国⼟交通省により採択されました。そして令和6年3⽉、国管理区間の全ての⼯事が無事に竣⼯。その節⽬として「肱川治⽔碑」が建⽴され、激特事業の完了を記念する除幕式が開催されました。
そこで今回、この事業の背景と、樋⾨の⾓落しに採⽤されたエスロンネオランバーFFUについて、国⼟交通省 四国地⽅整備局 ⼤洲河川国道事務所様にお話を伺いました。

肱川激特事業竣⼯記念 肱川治⽔碑除幕式
肱川激特事業竣⼯記念 肱川治⽔碑除幕式

インタビュー : 2026年3月
国⼟交通省四国地⽅整備局 ⼤洲河川国道事務所

Guest

事業対策官
郷⽥ 正博 様(元肱川緊急治⽔対策河川事務所 ⼯務課⻑)
⼯務第⼀課
島⽥ 和磨 様

Interview

激特事業にかける想いと将来への対策

———国土交通省 四国地方整備局 大洲河川国道事務所でのお仕事内容をお教えください

郷⽥様 : 私ども⼤洲河川国道事務所は、愛媛県南部(南予地⽅)の国道、⾃動⾞専⽤道路の整備と、南予地⽅⼀帯を流域に持つ肱川のうち、下流約20キロの直轄区間における河川管理を担当しています。肱川は源流から河⼝まで約103キロありますが、特に⼤洲盆地を通り瀬⼾内海の伊予灘に注ぐ下流部には資産が密集しており、氾濫時の影響が⼤きいため国が管理しています。
河川管理とひとことで⾔っても、⽇常の巡視、出⽔時の対応、堤防の維持補修、そして今回のような⼤規模改修まで幅広い業務があります。特に平成30年7⽉豪⾬を受けて始まった「肱川河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)」は、甚⼤な被害を受けた肱川の流域に対し、“もし今後再び同規模の洪⽔がやってきても越⽔による氾濫を防ぐ治⽔レベルを確保する”ことを⽬的とした特別な事業で、通常の河川改修とはスピードも制度も⼤きく異なり、5年間という短い期間で約6.9kmもの堤防整備を完了させました(通常の河川整備は20〜30年程度かかるとされています)。

地域の安全を守るため、限られた期間で確実に治⽔効果を発揮させるという⼤きな使命を背負って取り組んできました。
激特事業はスピードが求められるため、設計・施⼯・調整を同時並⾏で進める必要があり、それぞれの現場や⼯事の進捗、現場条件に合わせて設計・発注を進めてきました。

(左) ⼤洲河川国道事務所 郷⽥様
(右)    同      島⽥様
———激特事業はどのように進められたのでしょうか

郷⽥様 : 激特事業では、5年の限られた期間の中で確実に治⽔効果を発揮させる必要がありました。そのため、通常の⼯事以上に効率的で途切れのない施⼯体制を整えることが重要でした。
そこで私たちは、「プレキャスト化による⼯期短縮」、「複数⼯区の同時進⾏」、「地域住⺠との密な調整」、「新技術の積極採⽤」を組み合わせながら、堤防の整備や護岸の補強などを⼀気に進めていきました。
こういった取り組みの⼀例を挙げますと、市内を通るJR線路を閉めきる陸閘(りくこう)を採⽤したことです。

平成30年7⽉豪⾬で最も浸⽔被害範囲が広かった東⼤洲地区は、以前にも洪⽔による浸⽔被害が起こっており、平成7年の激特事業で暫定堤防が整備されました。この暫定堤防とJR線路が交差していることが、今回の激特事業において⼤きな課題となりました。
交差部分の堤防を嵩上げするためには線路の嵩上げだけでなく、線路が通る橋の架け替えなども必要となり、15年以上もの施⼯期間が掛かってしまいます。そこで、激特事業の5年間で整備を完了するために、線路と堤防の交差部分には陸閘を採⽤しました。JR線路部に陸閘を設置するのは全国でも珍しい事例です。

その他にも、河川の整備はより多くの⽔が流れる下流から順に⾏う必要があります。そのため、⼯期が限られていることや地域ごとの地形に合わせた⼯法を検討する必要があるなど、想定通りに進まないこともありました。それでも、再び⼤きな出⽔が起きても被害を出さないよう、できるだけ早く安全性を確保する必要がありました。関係者全員が同じ⽅向を向き、強い使命感で取り組んだ5年間でした。
こうした⼤規模な治⽔対策の中で、堤防や護岸だけでなく、樋⾨や⽔⾨といった河川管理施設の機能を確実に保つことも重要な柱でした。特に、豪⾬時にトラブルで樋⾨が正常に閉じない場合でも確実に⽔を⽌められるように、バックアップ機能である⾓落しの整備は⽋かせない要素でした。

増⽔時にフラップゲートが閉鎖できない場合には、⾓落しを設置して逆流を防⽌します

———その大事なバックアップ機能に、FFU角落しが採用された経緯を教えてください

島⽥様 : ⾓落しは、ゲートが動かなくなった時に⽔を⽌めるための⾮常時における重要なバックアップ機能です。激特事業では樋⾨の信頼性を⾼めるため、この⾓落し材を新しく整備する必要がありました。
実は、今回採⽤したエスロンネオランバーFFU(合成⽊材)について、私たちは最初から知っていたわけではありませんでした。設計を担当したコンサルタントの⽅から「こういう素材がありますよ」と提案を受けたのが最初のきっかけです。普段の業務では、どうしても従来からのものを使うことが多く、新しい素材について知る機会は限られていますので、「そんな選択肢があるのか」と驚いたのを覚えています。もしこの素材がNETIS(国⼟交通省の新技術情報提供システム)に登録されていれば、新技術情報の⼀つとして、設計段階で検討される機会がより多くなった可能性はあると思いますが、そういう意味では、今回のコンサルタントからの提案は本当にタイミングが良かったと思います。

そこからは、従来の素材も含めて、複数の候補を⼀つひとつ丁寧に⽐較していきました。実際に⼿に取ってみると、素材ごとにそれぞれ異なる特徴がありました。「軽くて扱いやすいが、⻑期保管で形が変わりやすいもの」、「丈夫だが、⼈⼒で扱うには重さがネックになるもの」など、それぞれに良いところと課題がありました。
どれが“正解”というわけではなく、現場の条件に合うかどうかが⼀番のポイントでした。その中で、エスロンネオランバーFFUは、「適度な重さで扱いやすい」「⽔に強く、⻑期的な使⽤に耐えうる」「⼈⼒による対応が可能である」などの点から、今回の樋⾨の運⽤条件に適合していると判断されました。また、今回の激特事業では12箇所の樋⾨に⾓落しを整備しましたが、現場ごとに条件が異なる中で、各樋⾨の施⼯条件・運⽤条件に対して適⽤しやすい素材であることも、採⽤を検討する上での要素となりました。

⾓落しは、普段は使わない設備です。出⽔対応において実際にまだ⼀度も使⽤していませんし、これからも実際に使⽤する場⾯が訪れない⽅が良いと考えています。ただ、本当に緊急の際には、この⾓落しが⽔害から街を守る重要なバックアップ機能になります。その時に確実に使えるよう、⽇々の訓練は⽋かさず⾏っていく必要があると考えています。

———角落しはどのような場面で使用されるのですか

島⽥様 : 樋⾨のゲートには”フラップゲート”という機構が利⽤されていて、普段は特別な操作をしなくても、本川の⽔位が上昇し⽀川に逆流しそうになると⽔圧で⾃動的に閉まる仕組みになっています。いわば“⾃分で閉まる”構造です。ただ、豪⾬時には流⽊や⼟砂が流れ込んだり、漂流物がゲートの噛み合わせ部分に挟まったりして、本来なら⾃分で閉まるはずのゲートが思うように動かないことがあります。こうした“想定外の詰まり”や“物理的な引っ掛かり”が起きた時に、最後に頼りになるのが⾓落しです。
⾓落しは、ゲートの前に⼀枚ずつ板を落とし込んでいくことで確実に⽔を⽌めるための緊急⽤設備です。本来はクレーン⾞で吊り下ろして設置しますが、肱川流域には樋⾨周囲のスペースが狭くて⾞両が⼊れない場所もあります。その場合は、⼈⼒で⼀枚ずつ運び、慎重に落とし込んでいきます。

河川側へ⼀⽅通⾏で⽔が流れるフラップゲート
河川側へ⼀⽅通⾏で⽔が流れるフラップゲート

島⽥様 : また、⾓落しは普段は使わない設備だからこそ、いざという時に確実に機能する状態で保管しておくことが重要となります。私たちは⾓落しを樋⾨のすぐ近くに設置した収納箱に⼊れて保管しています。収納箱には鍵をかけ、盗難やいたずらを防ぐ対策も⾏っています。

鍵付きの収納箱に収められています

なぜ樋⾨のそばに置いているかというと、遠くに保管してしまうと、豪⾬時に道路が冠⽔したり、倒⽊や⼟砂で通⾏できなくなったりした時に、必要な時に現場へ運べなくなる可能性があるからです。⾓落しは⾮常時における重要なバックアップ機能として確実に使えることが最も重要なので、どんな状況でもすぐに取り出せる現場近くに置いておく必要があります。
さらに、収納箱に⼊れているのは、直射⽇光や⾬による劣化を防ぎ、⻑期間安定した状態を保つためでもあります。定期的に点検を⾏い、訓練で操作⼿順を確認することで、緊急時にも迷わず対応できる体制を整えています。

郷⽥様 : 激特事業を進める中では、地域の皆さんの協⼒が本当に⼤きな⼒になりました。現場で作業していると、住⺠の⽅から「ご苦労さま」「これで安⼼できるね」と声を掛けていただくことも多く、地域と⼀緒に治⽔を進めている実感がありました。肱川は⼤洲の歴史や⽂化を育んできた川でもありますので、⼯事を進める際には、景観を損なわないよう細かな部分まで配慮しながら進めてきました。堤防や樋⾨が新しくなっても、肱川らしい⾵景が残るように、地域の⽅々と相談しながら形を創っていったことも印象に残っています。

⾓落しは軽量なため緊急時にも⼈⼒で設置可能

設置作業を動画でご覧いただけます︕

———事業を進めるうえで、地域との協力はありましたか?

郷⽥様 : 激特事業は地域の理解なくして成⽴しませんでした。堤防整備のための⽤地買収や⼯事⾞両の通⾏など、住⺠の皆様には多くのご協⼒をいただきました。特に、平成30年7⽉豪⾬の記憶がまだ鮮明に残る中で、「少しでも早く安全な川にしてほしい」という声を多くいただき、それが私たちの⼤きな⽬標と励みになりました。
肱川は⼤洲の歴史や⽂化を育んできた川でもあります。治⽔事業を進めるうえでは、単に堤防を⾼くするだけでなく、地域の景観や暮らしとの調和も⼤切にしてきました。⼯事の際には、地域の⽅々と意⾒を交わしながら、できる限り肱川らしい⾵景を残すよう配慮して進めてきました。

肱川流域の治⽔は激特事業の完了後も続きます。今回の事業で得られた経験や地域とのつながりを⼤切にしながら、今後も安全で安⼼して暮らせる川づくりに取り組んでいきたいと考えています。

堤防が⽇々形になっていくことで、地域の皆さんの安⼼感が少しずつ広がっていくのを感じました。完成後には治⽔碑を建⽴し、災害の記憶を⾵化させない取り組みも⾏っています。
2026年3⽉7⽇には治⽔碑の除幕式が開催されました。現場で関わってきた多くの⽅々が集まり、これまでの激特事業を振り返る貴重な場になりました。普段は⼯事の進捗に意識が向きがちですが、こうした節⽬に⽴つと、過去からの積み重ねが確かに形になったことを実感します。激特事業に携わった者としての責任と⼿応えを改めて感じた時間でした。

———最後に、今回の激特事業を振り返って一言お願いします

島⽥様 : 今回、新たな素材として、積⽔化学さんのエスロンネオランバーFFUを使⽤させていただきましたが、我々は新しい技術を使うことに抵抗はありません。技術的妥当性や経済性、安全性を総合的に検討したうえで、有効と判断される技術については、今後も積極的に活⽤を検討していきたいと思っています。それが地域の安全に繋がっていくのですから。

郷⽥様 : 激特事業は完了しましたが、肱川流域の治⽔はこれからも続く取り組みです。今回のFFU⾓落しの採⽤は、現場条件と技術的特性を踏まえた検討の結果として、有効であった⼀例だと考えています。地域の皆さんと協⼒しながら、肱川の歴史ある景観を守りつつ安全性を⾼めていくという姿勢は、今後の河川整備でも変わりません。これからも地域の声を⼤切にしながら、より良い治⽔に取り組んでいきたいと考えています。

———お忙しい所、誠にありがとうございました。

<積水化学 担当者から一言>

機能材事業部
機能材営業部
⽔処理・耐⾷グループ
岡 瑞穂

⼤洲河川国道事務所の郷⽥様、島⽥様、また⾓落し設置にご尽⼒いただきました皆様には、この度の取材にもご協⼒いただき、⼼より感謝申し上げます。
激甚災害対策特別緊急事業は、限られた5年の中で確実に治⽔効果を発揮するため、設計・施⼯・調整を⼀体で進め、地域の理解を得ながら関係者が⼀丸となって完成されたものと感じております。
こうした取り組みの中で、樋⾨における⾮常時のバックアップ機能としてエスロンネオランバーFFU製⾓落しをご評価いただき、誠にありがとうございました。
今後もエスロンネオランバーFFUを通じて社会貢献に努めてまいります。

排⽔樋⾨とは︖

市街地に降った⾬⽔を集めて、堤防内の暗渠を通じて河川へ放流する施設です。
洪⽔により河川の⽔位が上昇した場合、⽔路を閉鎖するゲートにより逆流を防⽌する機能を持ちます。

排⽔樋⾨の仕組み

通常時

フラップゲートが開放され、⾬⽔などの排⽔が河川に流れ込みます

増水時

フラップゲートが⽔圧により⾃動で閉鎖し、市街地への逆流を防⽌します

増水時

フラップゲートが異物により閉鎖できないと、⽔が逆流し市街地の浸⽔被害が発⽣してしまいます

増水時

フラップゲートが閉鎖できない場合には、⾓落しを設置して逆流を防⽌します

—— ⼤洲市に⾏こう︕ ——

愛媛県の県庁所在地である松⼭から、宇和島⽅⾯への特急「宇和海」に乗ること40分。「伊予の⼩京都」と呼ばれる⼤洲(おおず)市に到着します。ここは肱川(ひじかわ)の流域にある⼤洲城を中⼼に発展した旧城下町。平成16年に建築当時の⼯法・⽊造で復元された⼤洲城の天守から肱川の流れを望めば、気分はすっかりお殿様。築城名⼈と称された藤堂⾼⻁公も同じ景⾊をみたのかなぁと思いを馳せながら、上機嫌で町並みを散策してみると商家や武家屋敷だった建物が⽴ち並び、これまた良い感じの城下町が広がっています。NHK連続テレビ⼩説「おはなはん」のロケ地になったり、「東京ラブストーリー」で使われたポストが残っているのも頷けますね。また町中には歴史的建造物をリノベーションした宿泊施設があり、ここに泊まることができました。
皆さまも是⾮、⼤洲市に⾜を運んでゆっくりと歴史を感じてみてください。きっと⼤満⾜な旅になりますよ︕

Products

今回ご紹介させていただいた製品

ガラス長繊維強化プラスチック発泡体
エスロンネオランバーFFU

製品解説———

エスロンネオランバーFFUは、硬質ウレタン樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した合成木材です。天然木材に代わる素材としてあらゆる分野で使用可能。自然環境保護に役立つ素材として注目されています。

特長
  • 1.天然木材のように

  • 2.プラスチックだから

施工例
  • 1.水処理施設に

    覆蓋

    耐久性に優れ、水に浮く軽さを持ち、万一落下した場合も回収が容易です。長期使用品のリユースが可能でライフサイクルコスト削減にも貢献します。

  • 2.港湾施設に

    浮桟橋

    耐水性・耐食性に優れ防腐処理の必要が無く、水質に影響を及ぼさないため環境に配慮した設計が可能です。

  • 3.鉄道施設に

    合成まくらぎ

    コンクリートと同等の品質安定と耐久性能をあわせ持ちながら木材のように施工でき、鉄道会社各社に採用されています。

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