2024年04月 No.121 

特集 PVCアワード レポート1

施工性と耐久性を両立、
大型建物用大容量雨とい「超芯V-MAX」/積水化学工業㈱

 積水化学工業㈱の環境・ライフラインカンパニーでは、上下水道などの社会インフラ資材や鉄道線路のまくらぎとして使用される合成木材、防音材料などを提供。プラスチックを使用した資材で、私たちの生活を支えています。
 今回は、同社が提供する豊富な資材の中でも、「PVC Award 2023」で準大賞を受賞した大型建物用大容量雨とい「超芯V-MAX」について、積水化学工業㈱ 環境・ライフラインカンパニー企画担当 三宅慶昌氏、技術開発担当 小川功氏、平山健次氏にお話を伺いました。

積水化学工業㈱

 1947年に創業、プラスチック製品メーカーのパイオニアとして、1952年に日本初の硬質塩ビ管「エスロンパイプ」の量産化に成功、1957年には世界初の樹脂製雨とい「エスロン雨とい」を発売以来、半世紀以上にわたって、生活に欠かせない上下水道などのライフラインを支えている。現在は、インフラ、住宅、医療関連分野などで幅広く事業を展開し、社会基盤を支える様々な製品やサービスを提供。安全で快適なライフライン・水環境づくりに貢献している。

大型建物に対応した「超芯V-MAX」の開発

 大型建物用大容量雨とい「超芯V-MAX」は、超延伸シートと塩ビ樹脂の3層構造で構成される業界最大級の大容量雨といです。
 「超芯V-MAX」が開発されるまで、大型建物用の軒といは汎用的に使用できる既製品がありませんでした。
 従来、大型建物への雨といの施工は、コイル状の鋼板を建物の仕様に合わせて職人が折り曲げて加工。さらに水漏れ防止のコーキング処理などを施して仕上げていました。そのため、コイル状の鋼板を使用した場合では、現場の実寸法に合わせて、その都度加工する必要があるので、熟練した技術が必要だったそうです。
 「Eコマース市場の拡大にともなって物流倉庫などの大型建物の需要は増加している一方で、昨今の施工現場は職人不足の課題を抱えています。そこで当社では、さらなる大型建物の施工ニーズの高まりに応えるため、より施工性が高い製品の開発に着手。大型建物に向けた汎用的な規格品の開発をすることで、現場の作業者の負担軽減にもつながると考えました」(三宅氏)

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塩ビと超延伸シートの積層により、軽量で耐久性の高い製品が完成

 「塩ビは耐久性が高いので、建材・建築分野で広く使用されている素材です。特に、耐候性や耐薬品性に優れているので、当社でも多様な塩ビ製雨といを提供しています。しかし、塩ビは熱による伸縮を抑える為の施工をしなければいけないという点が、指摘されてきました」(平山氏)
 そこで、「超芯V-MAX」では、芯材としてポリエステル系樹脂の超延伸シートを塩ビで挟み込むことで、塩ビの伸縮する性質をカバー。寒暖差にも強い、耐久性・耐衝撃性に優れた製品が完成しました。本体重量は金属加工といの約半分。大幅な軽量化により、施工効率と安全性を向上させます。

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 「『超芯V-MAX』は、衝撃に強く、腐食しないことから、製品の長寿命化とメンテナンスの省力化にも成功。特殊な工具を使用せずに手で簡単に切断でき、設計や施工の手間も軽減できるので、現場の負担を大きく軽減しています」(小川氏)
 排水能力としては、従来の塩ビ製雨どいと比べて約4倍の排水量を実現。独自の構造でサイフォン現象を誘発させる「大型高排水システム」と組み合わせて使用すると、より排水効率を高めることができ、竪といの本数削減または口径サイズダウンも可能となるそうです。
 「『大型高排水システム』は、配管内に排水を充満させた状態で排水するため、空気を巻き込む従来の排水方法よりも、格段に排水効率を向上させています。『超芯V-MAX』と『大型高排水システム』を組み合わせて採用することで、激甚化している豪雨や大型台風などの場面での活躍が期待されています」(小川氏)

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「大型高排水システム」の専用部材を組み合わせて使用する

大型製品に込められた、繊細で高度な技術

 「PVC Award 2023」では、発想の目新しさや、大型部材の表裏両面を塩ビ素材(片側数百ミクロンの薄さ)で押出し成形するという高度な技術が評価され、準大賞に選出されました。
 「『超芯V-MAX』の場合は、大型製品の押出し成形という難しさに加えて、薄い硬質塩ビを超延伸シートの両面に均一な厚さで積層する高度な技術が必要。塩ビ樹脂を押し出すときの圧力の調整も、成功までに非常に難航しました」(平山氏)
 積水化学工業㈱は、研究所と共同で調査してシミュレーションを重ねながら、工程を細かく見直し、試行錯誤を重ねていったそうです。そして、高難易度な技術を安定させながら、市場での流通に向けて生産ペースの向上を実現。ついに汎用型オール樹脂製の大型建物用雨とい「超芯V-MAX」が完成しました。
 完成後は、自社の試験場で、実際に施工した状態で製品の耐久性や施工性を検証。専用の部材と組み合わせて一定の条件下で試験風速60m/秒にも耐えることを確認しています。
 「『超芯V-MAX』の開発を通じて、製品の大型化と、硬質塩ビ樹脂を薄く積層する押出成形のノウハウが増えました。今回開発した技術は、建材・建築に限らず、車両の部材など、耐久性や軽量化が要求される色々な場面で活躍できるのではないかと期待しています」(三宅氏)

写真:耐風圧試験の様子(社外試験評価機関)
耐風圧試験の様子(社外試験評価機関)

社会を豊かにする製品開発を続けていきたい

 「超芯V-MAX」は、2023年9月の発売から、物流倉庫などでの施工実績を着々と積み上げています。積水化学工業㈱では、現場で実際に施工した際の要望をくみ取りながら、さらなる製品開発を続けていくと言います。
 「それぞれの物件環境に最適なバリエーションを出してほしいという現場からの声を受け、今後は、さらに多様な建物への施工に向けて、製品開発を続けていきたいです。そして、大きな製品だからこそ、輸送の仕方や輸送コストなどの流通面の課題にも取り組んでいきます」(小川氏)
 「積水化学グループは、地球環境の保全と持続可能な事業の両立に向けて、環境負荷の低減を目指し、取り組みを進めています。『超芯V-MAX』についても、現在、リサイクルスキームを検討中です。塩ビとポリエステル系樹脂の複合材ですが、マテリアルリサイクルの実現へ向けた技術開発にも挑戦し続けていきます」(平山氏)

写真:施工された「超芯V-MAX」
施工された「超芯V-MAX」
写真:お話しいただいた小川氏、平山氏、三宅氏
お話しいただいた小川氏、平山氏、三宅氏